おばちゃん、異世界で人生クリアしました
……えーと。
まず一言、言わせて。
死ぬ瞬間、思ってたより静か。
もっとこう、
走馬灯ドーン!
感情バーン!
みたいなん想像してたんやけど。
実際は、
ふわぁ……って感じ。
拍子抜けするくらい、穏やか。
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気がついたら、
私は、どこでもない場所に立ってた。
地面あるのに、踏んでない感覚。
空あるのに、色がない。
上下も、前後も、
正直あやふや。
「……ここ、どこやねん」
ツッコミ入れたら、
ちゃんと声出た。
お、まだ喋れる。
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「ようこそ」
後ろから、声。
振り向くと、
人……っぽいけど、人ちゃう。
光の輪郭だけでできた存在。
顔はぼんやり。
性別も年齢も不明。
要するに――
いかにもそれっぽいやつ。
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「あなたは命を燃やし、禁忌を行使しました」
「あー……はい」
知ってる。
自覚ある。
めっちゃある。
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「後悔は?」
即答。
「ないです」
ほんまに。
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「未練は?」
……ちょっと、間。
「……家族に、直接さよなら言えてへんのは、惜しい」
それくらい。
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光の存在、
少しだけ、柔らいだ気がした。
「珍しい魂ですね」
「そう?」
「恐怖より、納得が勝っている」
そらそうや。
私、
ちゃんと生き切ったからな。
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「では、次の段階へ」
「次?」
「死後の世界です」
あ、やっぱあるんや。
異世界のさらに向こう。
二段構えかい。
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歩き出す。
……いや、歩いてへん。
流れてる。
空気に。
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途中で、
ふと、気配を感じた。
知ってる気配。
めちゃくちゃ、知ってる。
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「……遅かったな」
この声。
この言い方。
振り向く前から、分かる。
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「エドウィン」
いた。
ちゃんと。
剣も、傷もない。
若い頃みたいな姿で。
……ずるい。
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「……お前」
一歩、近づいてきて。
次の瞬間。
抱きしめられた。
力、強い。
離す気、ゼロ。
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「……心臓、止まるかと思った」
「もう止まってるやろ」
「黙れ」
ちょっと笑った。
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「すまなかった」
「何が?」
「守ると、言ったのに」
あー。
それ。
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「聞いて」
エドウィンの胸、押して、距離作る。
「守ったやろ。私ら、ちゃんと」
村は焼かれた。
でも。
家族は、
最後まで一緒やった。
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「私が勝手に選んだんや」
「それでも――」
「それでも、や」
遮る。
強めに。
「私、後悔してへん」
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エドウィン、目、伏せる。
「……強いな、お前は」
「今さら?」
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その時。
小さな足音。
……来た。
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「ママ!」
ユリウス。
走ってきて、
そのまま、私に飛び込んできた。
「……ごめんな、怖い思いさせて」
「ううん!」
即答。
強い。
ほんまに。
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「ママ、また一緒?」
「うん」
即答。
今度は、私が。
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光が、満ちる。
「では――旅立ちの準備を」
あ、これ最終段階や。
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私は、二人の手を取る。
「行こか」
「どこへ?」
エドウィンが聞く。
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少し考えて、答えた。
「次の人生」
「……また異世界?」
「どうやろな」
笑う。
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でも、一つだけ確信ある。
今度も、家族や。




