勝ったのに、負けた日
……静かや。
さっきまで、
剣の音、怒号、魔術の爆音で
耳おかしなっとったのに。
今は、
変に、静か。
白い光が、
ゆっくり消えていく。
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「……レミ?」
聞こえた。
エドウィンの声。
あれ?
聞こえるってことは、
まだ死んでへん?
……いや、ちゃうな。
体、感覚ない。
地面、踏んでへん。
あ、これ。
あかんやつや。
⸻
視界が戻る。
まず見えたのは――
団長。
倒れてる。
完全に、動かへん。
胸のあたり、
魔法で抉れたみたいに、消えてた。
……やっちまったなぁ、私。
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「……終わった、のか……?」
エドウィンが、
膝をついたまま呆然としてる。
勝った。
影の傭兵団の団長は、
確実に、死んだ。
長年の因縁。
復讐の連鎖。
国を壊そうとした男。
――全部、終わった。
……はず、やのに。
⸻
「……レミ?」
また呼ばれる。
必死な声。
でも、
私、返事できへん。
口、動かへん。
喉、ない感じ。
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あー。
これ、完全にアレや。
魂、抜けてるやつ。
⸻
「レミ!!」
エドウィンが、
立ち上がろうとして、よろける。
無理すんな。
あんた、まだ血止まってへんやろ。
……言いたいけど、
声、出えへん。
⸻
ユリウスの声が聞こえた。
「……パパ?」
泣いてる。
近づいてくる足音。
「ママは……?」
あかん。
それ聞いたら、
胸、ぎゅってなる。
――胸ないけど。
⸻
「……レミは」
エドウィン、言葉に詰まる。
言うな。
言わんといて。
まだ、
確定させんでええ。
⸻
でも。
エドウィン、
私が倒れてる場所を見る。
焦げた地面。
魔法陣の残滓。
そして――
私の体。
動かへん。
⸻
「……俺が、守るって……」
声、震えてる。
あかん。
ほんまに、あかん。
⸻
「約束したのに……!」
剣、落ちる音。
膝、地面につく音。
……あーもう。
ほんま、
最悪の終わり方や。
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でもな。
後悔は、してへん。
一ミリも。
⸻
三十路で異世界来て。
いきなり求婚されて。
結婚して。
子ども産んで。
村焼かれて。
逃げて。
戦って。
最後に――
ちゃんと、家族守れた。
それでええ。
⸻
「……ママ」
ユリウスの声。
小さい。
でも、
ちゃんと前向いてる。
あの子、強いわ。
⸻
あー。
ほんまは、
もうちょっと生きたかったけど。
まあ。
ええ人生やった。
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光が、また、差す。
今度は、
あったかい。
誰かが、
手、引いてる感じ。
⸻
……次、どこ行くんやろうな。




