本拠突入
結論から言う。
敵の本拠、想像の三倍は嫌な場所やった。
なんやねんこれ。
湿ってて、暗くて、寒くて、
空気が「帰れ」って言うてくる。
「なあエドウィン」
「なんだ」
「ここ、絶対ろくな思い出作られへん場所やで」
「同意する」
即答やめて。
⸻
影の傭兵団の本拠は、
山の腹をくり抜いた地下要塞。
入口一つ。
逃げ道なし。
「……ほんま、覚悟決めさせに来てるな」
「そういう場所だ」
せやろな。
⸻
燕の傭兵団、総員二十名弱。
全員、無言。
笑顔なし。
軽口なし。
あ、これ本気のやつや。
⸻
「突入後、散開」
エドウィンの指示は短い。
「俺が前に出る」
「はいはい、また主人公ムーブ」
「……任せる」
あ、今一瞬、
ちょっとだけ笑ったやろ。
⸻
合図。
扉、破壊。
ドンッ!!!!
音、でかすぎ。
もう隠密とかない。
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中、戦場。
松明の火。
剣の反射。
怒号。
「敵だ!!」
「侵入者!!」
はい始まりました。
⸻
影の傭兵団、
数が多い。
そして、
強い。
「くっ……!」
前衛が押される。
「レミ!」
「了解!!」
魔術展開。
床、凍結。
「うわああ!?」
滑る敵。
転ぶ敵。
最高。
⸻
でも。
奥から出てきた。
黒い外套。
仮面。
……さっきのやつより、圧が違う。
「直属、また来たで!!」
「ちっ……」
エドウィンが前に出る。
剣、交錯。
金属音。
速い。
重い。
「……強いな」
「そっちもな」
仮面の男、笑った。
嫌な予感しかしない。
⸻
その瞬間。
奥の扉が、
ゆっくりと開いた。
ギィ……。
空気、変わる。
本気で。
⸻
出てきた男。
仮面なし。
白髪交じり。
立ってるだけで、重い。
「……やっと来たか」
低い声。
ぞわっとした。
⸻
エドウィンの動きが、止まる。
「……団長」
その一言で、確信。
影の傭兵団団長。
元・英雄。
元・王国騎士団長。
全部の元凶。
⸻
「久しいな、副団長」
……え。
え?
ちょ、今なんて???
「副団長……?」
団長、口角上げる。
「まだ、生きていたとはな」
エドウィン、答えない。
剣、構えたまま。
空気、張り詰める。
⸻
「……話は後だ」
エドウィンが言う。
「ここで終わらせる」
団長、笑った。
「それは――こちらの台詞だ」
⸻
その瞬間。
影の傭兵団、
全軍動いた。
「総力戦や!!」
誰かの叫び。
はい来た。
最悪イベント確定。
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剣。
魔術。
血。
全部が、ぶつかる。
後退なし。
逃げ道なし。
⸻
そして私は思う。
……これ。
絶対、
誰か死ぬ流れやん。
嫌な予感が、
胸に貼り付いて離れへん。




