無双するエドウィンと床と友達な私
結論から言う。
闘技場、地獄。
魔術修行、もっと地獄。
どっちも逃げ場なし。
⸻
まず、私。
エルザ師匠の修行は、
優しさ?
なにそれ美味しいん?って世界やった。
「立って」
「はい」
「魔力、流して」
「はい」
「違う」
ドンッ!!
……床、冷たっ!!
「今の、何が違いました?」
床に顔押し付けられながら聞く弟子。
「全部」
即答やめて!!!
「魔力はね、気合じゃない」
「血流と一緒」
「流れを“感じて”、制御するもの」
そう言いながら、
師匠は私の背中に指を当てる。
――ぞわっ。
「ここ、詰まってる」
「ここ、無駄に溜めすぎ」
「ここ、暴発寸前」
……え、
私、爆弾か何かですか?
「これで今まで生きてたの、奇跡よ」
奇跡って言葉、
そんな使い方ある???
⸻
一方、その頃。
闘技場。
エドウィンはというと。
「次の挑戦者ァァ!!」
歓声。
砂煙。
剣戟。
そして――
「……勝者、エドウィン!!」
はい、また勝ち。
三戦目。
全部、一撃。
観客、ドン引きからの大歓声。
「なんだあの剣!!」
「動きが無駄なさすぎる!」
「元騎士か!?」
……正解です。
ただし、
いろいろ失った元騎士。
控室で、
元副官が小さく息を吐く。
「目立ちすぎだ」
「仕方ない」
エドウィンは淡々。
「ここでは、強さを隠す方が危険だ」
分かってる。
分かってるけど。
――影の傭兵団。
あいつらに、
目をつけられたら終わりや。
⸻
修行二日目。
私はもう、
床に寝転ぶのが板についてきた。
「立ちなさい」
「……はい」
「倒れるな」
「無理です」
「気合」
根性論きた!?
さっき否定してたやん!!
「魔力制御は、
精神の安定が最優先」
「泣きながら撃つ魔法は、
味方ごと吹き飛ばす」
……うん、反論できへん。
「いい?」
エルザ師匠は、
珍しく真面目な顔をした。
「守るための魔法はね」
「覚悟がないと、使えない」
その言葉で、
エドウィンの背中と、
ユリウスの手の温度が、
頭をよぎった。
「……覚悟なら、あります」
「なら、耐えなさい」
次の瞬間。
――魔力、強制解放。
内側から、
体を引き裂かれる感覚。
「っ、ぐ……!!」
声、出ない。
でも。
逃げない。
倒れない。
――死なない。
「……合格」
その一言で、
私はその場に崩れ落ちた。
⸻
夜。
合流したエドウィンは、
私の様子を見て、眉をひそめた。
「……無理してないか」
「してる」
即答。
「でも、必要」
エドウィンは何も言わず、
私の頭に手を置いた。
……ずるい。
こういうとこ、
ずるいねん。
「父ちゃん、今日も勝った!」
ユリウスが、
誇らしげに報告。
「すごいね」
私は笑った。
でも、心の奥で。
この街で、
力を得ているのは、
私たちだけじゃない。
――そう感じていた。
闘技場の影で。
確実に、
“何か”が動き始めている。




