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最強の転移者 〜俺は俺のペースでエンジョイするからお前らの物語に付き合わねーよ〜  作者: 海岸線の夕日


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8/10

8話 俺は、まだ明日を殺せない

明日から、何をしようか。


一度は「逆を行こう、引きこもってしまおう」と思った。でも、それで本当にいいのか?


魔物を倒すか?村や町に行くか?


……そもそも魔物って、本当に「悪」なのか?

人間にとっては敵かもしれない。でもあいつらだって、ただ生きようとしているだけじゃないのか。ライオンがシカを喰うのと同じように、魔物が人間を襲うのだって、ある意味自然の摂理なんじゃないか。


俺が魔物を倒せば、人は助かる。でもその先に待っているものは?人間が増えすぎて森を切り開き、環境を壊し、バランスが崩れていく未来……。


だったら俺は何のために殺そうとしているんだ?

「人間だから」という理由だけで?それじゃ俺も、ただ偏った存在と何も変わらない。


じゃあ何もしないのが正しいのか?弱肉強食の摂理をただ静かに見守るのが、自然に忠実な姿なのか?


でも人を助けるのだって、同じくらい危うい。


病気を治す。食料を増やす。戦争を止める。俺が力を示せば、人は頼ってくる。頼られれば期待され、期待されればもっと大きなことを求められる。


村が町になり、町が国になり……

そして、いずれまた戦争が起きるかもしれない。


そのとき俺は、どっちの側に立つんだ?勝つ側か。負ける側か。それとも両方を殺して終わらせる側か。


介入すればするほど、責任は重くなる。弱肉強食を崩したなら、今度は人工的な秩序を作らなきゃいけない。でも俺に、そんなものを作り維持できるのか?


自然の摂理に逆らうこと自体が、傲慢なんじゃないか。地球でも「野生動物の保護」と言っているけど、結局は人間の都合でしかない。ここでもきっと同じ様なもんだろ? 俺の都合で、世界を変える権利なんて、本当にあるのか?


どっちを選んでも、後悔しそうだ。どっちに進んでも、手は血で汚れる気がする。


静かに夜は更けて行く。


明日、何をすればいいんだ?

魔物を倒す?

人間を助ける?


どれを選んでも、正しくない気がする。


……やっぱり、引きこもるのが、一番マシなのかな。最初に感じた方針を信じよう。


そうだ、魔石。


今日、魔石を見つけた様に、もしかしたら地中に魔石が埋まってる可能性あるのではないか? 探せば、生活に困らない程度の収入は得られるかもしれない。それで好きに生きよう。もし、魔物に襲われたら、それは自己防衛って事で良いだろう。


それでいい。派手な冒険も、英雄譚もいらない。ただ静かに、この世界の一員として生きていく。


そう決めて、俺は横になった。


でも、心の奥底で何かが囁く。


「それで本当にいいのか?」


「お前には力がある。使わない力は、ないのと同じだ」


「いつか後悔する日が来る」


目を閉じる。


明日のことは、明日考えよう。


少なくとも今夜は、何も決めなくていい。何も殺さなくていい。何も始めなくていい。


ただ、この静かな夜が、永遠に続けばいいのに。


そう願いながら、俺はゆっくりと眠りに落ちていった。


まだ、明日を殺す勇気はなかった。


明日という可能性を、まだ摘み取れなかった。


ただ、時間が過ぎるのを待つだけの、弱い俺がそこにいた。

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