6話 クリーム様を食べた瞬間、理性がログアウトした件
縦穴シェルターの薄暗い中で、俺はクリームパンのパッケージを丁寧に開封した。ネットで注文したばかりの、あの甘い宝物だ。安全な場所で、心ゆくまで味わうために、わざわざここまで持ち込んだのだ。もちろん、服は着ているぞ。
パッケージから取り出されたクリームパンは、ふっくらとしていて、表面に微かなツヤがあった。俺はそれを両手で包むように持ち、ゆっくりと鼻に近づけた。ほのかな小麦の香りと、甘いクリームの予感が漂ってくる。
ゴクリ
と唾を飲み込む音が、静かなシェルターに響いた。
まずは端から少しだけ。歯で慎重に齧り、パン生地だけを味わう。口の中でゆっくりと溶かしていく。塩気がほんのりと広がり、次第に甘みが滲み出てくる。まるで飴のように、時間をかけて変化する味を楽しんだ。
これが「パンの向こう側」の味か――
俺は目を閉じて、その一瞬に没入した。同じ工程を数回繰り返すうちに、ついに中からクリーム様が顔をのぞかせた。白くて艶やかな、あの甘美な核心だ。クリーム様は美しすぎる!
焦るな!
焦ってはいけない。俺は傍らに置いた水入りの空き缶を手に取り、一口含んで口の中をリセットした。最高の状態でクリームと向き合うために。
深呼吸を一つ。心を落ち着かせて――
ペロリ
舌先でクリームだけをそっと舐めた。
その瞬間、脳裏に閃光が走った。甘さがじわじわと広がり、頭のてっぺんからつま先まで、しびれるような快感が押し寄せてくる。理性が溶けていくのを感じた。
「やめろ、ゆっくり味わえ」という内なる声が脳内に響く。
「一気に食ってみな、飛ぶぞ!」と悪魔は囁く。
そして、気がついた時にはもう遅かった。手に持っていたクリームパンは、いつの間にか口の中に押し込まれ、ほとんど噛みもせずに飲み込まれていた。あのふっくらとしたパン生地も、とろけるようなクリームも、一瞬のうちに消え去ってしまった。
「……あぁ、神様、なんて残酷な……」
俺は空っぽになった手のひらを見つめ、深い後悔に襲われた。ゆっくり時間をかけて、ひと口ひと口を慈しむはずだった。あの微かな香り、パンの塩気、クリームの甘みの余韻――すべてを台無しにしてしまった。
シェルターの壁にもたれ、俺は目を閉じ、静かに瞑想に入った。
喉の奥を駆け抜けた甘さは
もう二度と戻らない
舌の上に残るのは
一瞬の白い罪と
すぐに冷める嘘のような余韻
焦燥に駆られ
貪る獣となって
聖なる白を一瞬で汚し
飲み干し
消し去った
空っぽの包装紙が嘲笑う
愚かな信徒よ
神の舌先を
一度味わった罪人は
永遠に救われない
またあの白い光が現れたとき
俺の理性は
同じように、美しく、潔く
ログアウトするというのか
作品の題名のサブタイトルを変更しました。
最強の転移者 〜バグ? 神トラップ 缶=トイレ 靴ベロン クリームパン〜
↓
最強の転移者 〜俺は俺のペースでエンジョイするからお前らの物語に付き合わねーよ〜




