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八州八彩掌編図鑑

カラー掌編#DCDDDD『分度器が眠るまで』

作者: 大館敬

僕は分度器。


ステンレス製で半円形をしている。白鼠色の風貌を、ロマンスグレーの佇まいだなんて茶化す人がたまにいるが、老けていると言われているようで心外だ。


当たり前だが、僕の専門は角度だ。分断された1°単位ではなく、無限とも言えるグラデーションで全ての角度を表出することができる。


時折、ただの定規のように使われることがあるが、あれも正直止めていただきたい。僕の直径線の部分は、舞台を支えるいわば裏方であって、そこにペン先で照点をあてられては、なんとも擽ったい気持ちになる。


角度に関しては、右に出るものはいないと自負しているが、そんな僕にも限界はある。それは僕が半円だということだ。180°までしか測れないということは、僕と正反対の存在までしか理解できないということを意味し、つまり360°測れない僕は、内省的に自らを捉えることができないという訳だ。


ただ誤解しないで欲しい。だからといって、僕がひどく傲慢で、自分勝手な性格だというわけではない。もしそうだったら、僕自身が世界を切り取る角度を間違えかねない。どんな角度で刃を入れるかで、この世界は幾通りにも表情を変える。


ちょっと眠たくなってきたが、もう少し話そうと思う。


僕もいつかはいなくなってしまうだろう。それでも、決して悲しまないで欲しい。僕は無限の角度を測ることができると言ったが、それは無限の可能性を提供できると同義ではない。僕は数字でしかない。つまり僕は未来ではなく、つねに過去なんだ。だから、夢溢れる未来を勝ち取るために必要な、果てしない挑戦の証である過去に、僕はなりたいと思っている。


駄目だ。頭が回らなくなってきた。それじゃ。期待しているよ。

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