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31.お正月

お正月。

ナツの家に再び訪れた雪は、ナツの家族とひとしきりイベントを楽しんだ後、

オーディションに向けてナツの動きをチェックしていた。


音楽はすでに止まり、静寂が支配するなかで、ナツは汗で濡れた髪をかきあげて息を整えていた。


「ナツ、ここまでにしようか」


雪の声は冷静で落ち着いているけれど、その奥にある熱量は確かに伝わってきた。


「まだ、もっと…やらなきゃ」


ナツは視線を伏せ、必死に答える。


「ナツが頑張ってるのは、誰よりも知ってる。だけど休まないと。私みたいにケガするよ。」


ナツはその言葉にうなずきながら、深呼吸をした。


「お願い、最後にもう1回だけ」


「じゃあ、これが最後。もう一度、最初から通して踊ってみて」


雪が手を離し、リモコンのボタンを押す。


音楽が流れ始め、ナツは再び動き出す。

その動きは以前より滑らかで、自信が乗っている。


雪はじっとその姿を見つめていた。


「いいよ。さっきよりよくなってる」


声は静かだが、満足そうだ。


「だけど、ここ」


雪が指差したのはナツの腰のあたり。


「重心が少し外に逃げてる。もっと軸を意識して」


ナツが振り返ると、雪は近づき、彼女の腰にそっと手を添えた。

触れる距離に、ナツの心臓が跳ねた。


「そうそう、そのまま。力を抜いて、自然に」


雪の声はささやきに近く、汗ばんだ肌の感触がナツの中にじんわりと染み込む。


「雪さん……」


「なに?」


雪は笑みを含ませて答えた。


「……ちょっと近い」


雪は軽く指を滑らせてナツの背中をなぞる。


「今の目の動き、よかったよ。もっと自信を持って」


「でも……」


ナツは少し躊躇う。


「自信がない時は、私のこと思い出して」


雪は真剣な眼差しで見つめてくる。


音楽が止まり、二人の呼吸だけが響く。


「雪さん……」


ナツは震える声で言った。

雪はそっとナツの額に唇を押し当てる。

そのやわらかな感触にナツの胸がざわつき、視線が雪の瞳に吸い込まれた。


そっとナツの肩に触れた雪。

その手がゆっくりと首筋へと滑り、髪の毛の束を優しくかきあげる。

ナツはそのたびに息を呑み、胸の内に秘めた熱が抑えきれずに膨らんでいく。


「雪さん……もっと」


震える声に応えるように、雪はゆっくりと距離を詰める。

唇が今度はナツの耳たぶに触れ、軽く息を吹きかける。


「感じてるね」


ナツの手がそっと雪の胸元に触れる。


「冷たい?」


雪の声がささやきに変わる。


「大丈夫…」


「ほしくなっちゃった…ナツのこと」


雪はそう言いながら、ナツの背中を撫で上げ、腰のラインにそっと手を回す。

触れる場所ごとに、ナツの身体は火照り、震えが伝わった。


そのまま雪の唇はナツの首筋へと移り、深くゆっくりとキスを落としていく。

ナツの身体が自然と雪に寄り添い、二人の距離は限りなく近づいていった。


「もっと触っていいよね…」


ナツはゆっくりとうなずく。

その言葉とともに、ナツの手が雪の背中からそっと胸元へと滑り、繊細に触れる。

雪の指先がナツの肌をそっと撫でるたび、ナツの身体にじんわりと熱が広がっていく。


耳元で雪の柔らかな吐息がかすめ、あたたかな息がナツの肌を撫でる。


「震えてる…」


雪の指先がゆっくりとナツのシャツを脱がしていく。

指先はひんやりと冷たいのに、肌に触れた瞬間すぐに温もりに変わっていった。

ナツの胸元が露わになると、雪の視線が優しくその柔らかな肌を見つめた。


「わたしのナツ…」


雪の唇がゆっくりとナツの首筋に落ちていき、ひとつ、ふたつと柔らかなキスを重ねる。あたたかな唇の感触に、ナツの背中はじんわりと熱を帯び、首筋の肌が敏感に反応していった。



「ココいい…?」



雪のささやきが耳元に響く。



ナツはそっと顔を上げ、雪の瞳を見つめた。その瞳は真っ直ぐで、揺るがない愛情に満ちていた。



ナツの手が自然に雪の胸元へと伸び、そっと触れる。薄い布越しでも伝わる鼓動に、雪の身体が微かに震える。



息が重なり、二人の距離は限りなく近づいていく。



雪の手がナツの腰に回り、軽く引き寄せた。ぴったりと重なる身体から伝わる温もりに、ナツは全身を預けた。



「もっと感じてほしい」



その言葉にナツは小さくうなずき、雪の胸に手を滑らせながら、全てを受け入れていく。



雪の唇がそっとナツの唇を捉え、熱く柔らかなキスが交わされた。唇が重なり合い、絡み合うたびに甘い吐息が漏れ、身体中に幸福と熱が満ちていく。



ナツの心は揺れながらも、確かなぬくもりに包まれていった。

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