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4 響子の頑なな考え方

響子の家から逃げるようにして出てきた失意の英介の足取りは重かった。響子は自分に対して愛が全くないというか、恋愛の対象とは思っていないのか、それとも清らかな恋に憧れている過度の清潔感の持ち主なのか、さっぱり分からなかった。


ただはっきりしていることは、英介は響子との関係を発展させたくて、別の言い方をすれば何もしないで壊れてしまうのが嫌だからキスをしようとしたのだが、響子の怒り方は半端ではなかった。


ビンタをされることは覚悟していたが、急所まで攻撃されるとは思っていなかった。響子は自分のことを獣だと思ってしまったのかもしれない。


 一方響子の家では、買ってきたロールケーキをカットしてそれぞれのお皿に載せて瑠璃子が部屋に来た。

「あれ、英介さんは?トイレ?」


響子は無言のままうつむいている。

「どうしたの?まさか私がいない間にケンカしちゃったとか?それはありえないよね。」


「あの人は紳士だと思っていたのに、実はけがらわしい獣だったの。」

「獣って、どういうこと?何かされたの?」


「いきなりキスしようとしたから引っ叩いて蹴飛ばしてやったの。」

「えっ、キスくらいで?もう2年くらいこうやって合奏練習してきたんだから、お姉ちゃんも英介さんのこと好きなのかなって思ってたんだけど。


英介さんもお姉ちゃんのこと好きみたいだから、どうしていつになってもキスしてあげないのって、私は思ってたくらいなんだけど。」


「私からしたら、もう2年じゃなくて、まだたったの2年よ。お互いを知るにはもっと接する時間が必要なのよ。結局性欲を抑えられなかったってことでしょ。


私、心の愛を第一に考えてるの。いくら時代遅れだと言われようが構わない。私の気持ちを第一に考えたら、性欲に勝てるはずよ。彼は性欲に負けたのよ。」


「そうかなあ。英介さんは性欲に負けたんじゃなくて、お姉ちゃんに自分の気持ちを伝えようとしただけなんじゃないかな?」


「小学生のあなたには分からないのよ。だいたい性欲が何かもわかっていないくせに。」

「お姉ちゃんはそういう分野のこと、疎すぎるのよ。小学生でも、私の方がお姉ちゃんよりも知識があるかもよ。」


「生意気言ってんじゃないの。兎に角この話はこれで終わりだし、合奏練習もこれで終わりよ。」

「(独り言)やれやれ、困ったお姉ちゃんだこと。あんないい人、なかなかいないと思うけどな。」

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