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82 運が良い?

 倒れるアキュートディアの背から飛び降り、巻き添えを回避する。見ると目を見開いて動かない。上手くいったことに胸を撫で下ろし、手を合わせた。


 後ろからヒルデとザグが近づいてくる気配を感じ、アッシュは振り向く。


「アッシュ君、怪我ない?」


 ヒルデが手を振りながら近づいてきた。アッシュがアキュートディアに遅れを取るとは思っていないが、ザグの手前、心配しないのはおかしいので聞いているのだろう。


「ああ、何とかな」


「え? え? あ、アッシュさんアキュートディアに何したんッスか」


 血もほとんど出ていないのに倒れて動かないアキュートディアを見て、ザグは驚き、アッシュに説明を迫った。


「無我夢中でちょうど手に持っていた解体用のナイフを振り回したら、いつの間にか動かなくなってました。運良く急所に当たったんだと思います」


 人目がある場所でアッシュとして刀を持って戦う姿はあまり見られたくない。どこで自分の強さがバレて、アメリアたちに知られるかわからないからだ。

 危険な場合は、ためらうことなく、刀を抜くのだが、アキュートディアは刀を使わなくても対応することが出来ると判断したため、ちょうど出していた解体用のナイフを使ったのだ。


「そうなんッスか。運が良かったッスね」


「ほんと、運が良かったね、アッシュ君」


 アッシュの答えに納得したようにザグは笑顔で頷き、それが嘘だとわかっているヒルデも相づちをした。


 まさか、低ランク冒険者のアッシュが武器でもない解体用のナイフを用いて狙って魔物を倒すというのがどうも信じられないようで、意外と誤魔化されてくれるのだ。

 アメリアたちとパーティーを組んでいたときも、解体用のナイフで魔物を倒してしまったことがあるのだが、そのときも運良く倒せただけだと誰もアッシュの実力で倒したのだと疑うことなどなかった。


「ヒルデさんも凄かったッス。あんな大きな岩を真っ二つだなんて」


「いや~、振ったらたまたま斬れちゃったみたいで、僕の方が驚いたよ」


 素直なザグは目を輝かせて頷いているが、ヒルデのあれは普通、誤魔化せないだろうと思っていてもアッシュは口にはしない。代わりに、ザグに質問をした。


「あ、ザグさんがこっちに来たってことは、ドンチョさんは誰が見てるんですか?」


 上手く誤魔化せたようで安心して忘れていたが、二人がここに来たということは、ドンチョは今一人のはずだ。もう魔物の気配は完全にないので、気絶している彼が魔物に襲われるということはないと思うが、そのまま放って置くのはよくないだろう。


「あ~、そうッス。ドンチョ!!」


 おそらく、アッシュが心配でザグは気絶しているドンチョを置いて来てくれたのだろう。

 倒れている方を向くと、リツハルトが側に座り、ゾインが膝を付き、倒れている彼に声を掛けていた。ポチも地面に降り立っており、心配そうにドンチョの顔を覗き込んでいる。


「おい、ドンチョ!! 返事しやがれ」


「頭を打っている可能性があるんだ。動かすな」


 冷静なリツハルトが気に食わないのか、ゾインが彼の胸ぐらを掴み、揺さぶった。


「てめぇの所為だぞ、リツハルト!! 

 てめぇの勝手で他の人間を巻き込んだし、ドンチョは怪我をしたんだ」


 リツハルトはゾインにされるがまま、抵抗をしようとしない。そこに慌てて来たザグが止めようと二人の間に入った。







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