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81 鋭い角を持つアキュートディア

「あの、アッシュさん?」


 アッシュの異変を感じたザグが声を掛けるが、問いには答えず気配を探り続ける。

 気配の方向がわかり、そちらの方へと目を動かすと大きな岩がこちらに迫って来るのが見えた。岩を斬ろうと柄に手を置こうとすると、ドンチョがアッシュを守ろうと割り込んできた。ドンチョは盾を構え、岩を受け止める。


「うわぁ!!」


 ドンチョは盾で受け止めたが、思ったよりも重く、勢いのある岩を防ぐことができずにアッシュの横を通り過ぎ、遠くへと吹き飛ばされた。


「――植物(ピアンタ)よ」


 アッシュは魔法を使い、ドンチョが飛ばされた方向に植物を生やし、衝撃を和らげようとしたが、大きな盾を持ち、体重の重い彼を完全には受け止めきれなかった。ドンチョは地面に投げ出され、そのままぐったりとして動かない。


「ドンチョ!!」


 ザグは思わずドンチョの側に駆け寄った。ドンチョの胸が上下に動くのが見え、呼吸はしているようなので、衝撃で気を失っただけだとわかり、アッシュは安堵する。


 岩が飛んできた方に顔を向けると、森の奥から二つの光が見えた。目をこらすと、その光は鋭い角を持った大きなアキュートディアの目だとわかった。アキュートディアはアッシュたちの周りに倒れている仲間の姿を確認すると恐ろしい目でこちらを睨み付ける。


 おそらく、ザグたちが倒したアキュートディアたちは角のあるアキュートディアの番だったのだ。ただでさえ仲間意識が高いアキュートディアが自らの番を傷つけられたのだ。

 その怒りは計り知れない。



 角を持つアキュートディアは魔法で大きな岩を生み出し、先ほどと同じように今度はザグを狙って岩を打ってきた。ザグが岩を避けるとドンチョに当たってしまうと考えると動くことが出来ない。せめて、ドンチョだけでもと思い、ザグは岩に背を向け、彼に覆い被さることで守ろうとした。


 衝撃を覚悟して目を閉じるが、いくら待っても何も起こらない。おかしいと思ったザグは目を開けようとすると岩が地面に落ちる大きな音が辺りに響き渡る。

 自分に当たったのかと思ったが、痛みはなく、音はザグがいるところとは違う方向から聞こえてきた。音がした方へ顔を向けるとアキュートディアが生み出した岩がザグたちを避けるように真っ二つに斬られていた。


 何が起こったがわからず、岩が飛んできた方を見るとザグを岩から守るようにヒルデが戦斧を手に立っていた。


 攻撃が当たらなかったことにますます腹を立てたアキュートディアは大きな岩を二つ続けて打ってきた。ヒルデに自分たちに構わず逃げるように言おうとザグが口を開く前に、彼女は岩に向かって走る。


 ヒルデは迫ってくる岩に向かって戦斧を振る。すると、岩は二つに裂かれ、地面に落ちた。

 続くもう一つの岩も同じように戦斧を振ることでザグたちに岩が当たる前に無力化した。


 ヒルデに岩による攻撃が効かないことがわかったアキュートディアは、今度はいくつもの小さな石を打ってきた。石は岩と比べものにならないほどの速さで迫ってくるが、ヒルデは焦ることなく、戦斧の鋭い刃先ではなく、斧刃で石を受け止め、軌道をそらす。

 石はヒルデだけではなく、ザグたちにも当たらなかった。


 またも攻撃が防がれたアキュートディアは、突撃の構えを取るために足に力を入れる。


 そのとき、アキュートディアの体に石が当たった。

 石が飛んできた方に顔を向けるとアッシュが、石を投げてきた。彼が石を自分に当てたのだと理解し、標的をアッシュに切り替える。投げてきた石を避け、先ほどヒルデを攻撃した以上の数の石を生み出し、彼に向かって打ってきた。

 アッシュは迫ってくる石を次々と避け、アキュートディアの方に走ってきた。


 近づいてきたのなら石ではなく、角で攻撃したほうがいいと考えたアキュートディアはアッシュに突進してきた。角が当たる直前に彼はアキュートディアの頭上を飛び、攻撃を避ける。避けるときに角を掴み、背に跨がった。

 アッシュに乗られたアキュートディアは彼を振り落とそうと前足を上げる。


「悪いな」


 アッシュはアキュートディアだけに聞かせるように小さな声で呟き、手に持った解体用のナイフで首を一突きする。刺されると口をパクパクと意味もなく動かすとそのまま倒れてしまった。







楽しんで頂けたなら幸いです。

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