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74 強引な受付の名前

「…パーティーを組むように言われたときに訪れた街って」


 嫌な予感がしてアッシュは恐る恐るザグに聞く。


「ティオルって街ッス」


「あの受付の人、本当に強引だったよ。私の勘は当たるから組んだ方が絶対いいって言ってこっちが頷くまで引かなかった」


 その時のことを思い出したのだろう、ドンチョは頼んだ食べ物を口にしながら顔を顰める。

 ゾインたちにそう言ったであろう人物を思い出し、頭に手を当て、うつむくアッシュにヒルデが小さな声で尋ねる。


「ねぇ、アッシュ君。その受付の人って」


「間違いない。ミミーだ」


 まさか、こんなところで彼女のことを聞くことになるとは思ってもいなかった。


 彼女がパーティーを組ませた者たちは成功する。確かにアメリアたちやゾインたちは冒険者として成功しているといえるだろう。だが、自分の経験やこうしてパーティーを組まされた人のことを聞くと、彼女に組まされたパーティー内の人間関係は上手くいっていないところが多いのかもしれない。


 そんなことを話しているとドンチョの肩にクレバーホークが止まり、彼が手に持っているものを食べようと嘴で突こうとしたが、食べ物がクレバーホークに取られる前に口に入れる。食べ物が貰えないことを悟ったクレバーホークは落ち込んだように鳴き、頭を下げる。


「こら、ポチ。人の食べ物は食べちゃダメだよ。あとでリツハルトさんに魔物の生肉でも貰いな」


 ドンチョは慰めるように優しくクレバーホークの頭を撫でる。撫でられたクレバーホークは嬉しそうに鳴いている。


「ドンチョさんの肩に乗っているのって、さっきリツハルトさんの肩に乗っていたのと同じクレバーホークですよね」


 あまりに自然な光景で疑問に思わなかったが、クレバーホークは賢いが、気高く、人に懐くことは難しいと聞く。

 しかし、ドンチョの肩に乗っているクレバーホークは彼にスリより甘えている。餌をねだるためかもしれないが、かなり人に懐いているように見える。


「そうッス。ポチは巣から落ちていたところをリツハルトさんが見つけて、育てた子らしいッス」


「僕、よく食べ物、持ってるんだ。ポチもそれを知ってるからこうしてねだりに来るんだけど、リツハルトさんからは人の食べ物をやらないように注意されてるから何も上げられないんだけどね」


「おい」


 声のした方を向くと、リツハルトがいつの間にか側に来ていた。リツハルトの姿を見つけるとポチはドンチョの肩からリツハルトの肩へ移動した。


「明日、フールピジョンの討伐に行く。そのつもりでいろ」


 それだけ言うとザグたちの返事を待たずにリツハルトは扉の方に歩いて行った。その後を追いかけるようにゾインもこちらに歩いてきた。


「待てよ、リツハルト!! 俺はまだその依頼を了承した訳じゃねぇぞ。

 ザグ、ドンチョ。奴を追いかけるぞ、ついてこい」


「あ、ゾインの兄貴。待ってください」


「支払いはもうしてるんで、アッシュさんたちはゆっくりしてくださいッス」


 ザグたちはアッシュたちにそう言うとゾインの方に向かい、慌ててギルドを出て行った。



「あれって上手くいってるって言えるのかな?

 ん? アッシュ君、何考えてんの」


 アッシュが口を開かずに黙り込んでいることに気づいたヒルデが首を傾ける。


「ザグさんたちってリツハルトさんが何者か知ってるのかなって。

 あ、いや、知らないからあんなに振り回されてるんだろうな」


「アッシュ君、知ってるの? あのリツハルトって人」


「たぶん、間違いないと思う」



 アッシュからリツハルトのことを聞いて、ヒルデは手に持った飲み物を口にする。


「確かに、知ってたら、あんなにこじれてなさそうだよね」


「ザグさんたちから話を聞いた限りだとあのゾインさんって人、面倒見良さそうだから相性は悪くないと思うんだが」


 ザグたちが慕い、勝手なことばかりするリツハルトであっても見捨てることができないことからもゾインは理不尽に怒鳴るだけの人間ではないのだろう。


 ミミーの勝手な考えで強引に組まされた元被害者として何か出来ないかと思うのだが、確証もないのに部外者であるアッシュがしゃしゃり出ていいものか悩んでしまい、どうしても二の足を踏んでしまうのだった。







楽しんで頂けたなら幸いです。

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