71 ポセンの街
連続投稿三回目になります。
今回からアッシュの尊敬する冒険家の名前を変更しています。ここまで読んで頂けている皆様には申し訳ありませんが、今後はこちらの名前で覚えて頂けると嬉しいです。以前、投稿した話もすでに変更済みです。
オノコロノ国に向かうため、アッシュたちはリセイン侯爵領のポセンの街に来た。オノコロノ国は島国で、そこへ行くためには船を利用するしかない。
ポセンの街はオノコロノ国に一番近く、ティーダ藩の中心であるユルの街までの連絡船が出ているのでそれを利用するつもりだった。
「え? すぐに乗れないんですか?」
アッシュの問いに申し訳なさそうに、連絡船の受付の職員は答える。
「はい。オノコロノ国に向かう便は元々少なく、連絡船は今、行ってしまったばかりです。
数日お待ちいただくことになりますが、いかが致しましょうか?」
「あれは? あの大きい船」
ヒルデが指す方向には連絡船よりも大きな船が停まっていた。そこから、大勢の人が船を出入りしている。
「あれは、オノコロノ国にあるリセイン侯爵領の駐屯所専用の船です。一般の方は乗船できないんです」
職員の言葉にヒルデは首を傾げる。
「オノコロノ国なのにリセイン侯爵領の駐屯所?」
駐屯所はエジルバ王国がティーダ藩を占領していた時にできたもので、戦いにより、大量の兵士を失ったティーダ藩が回復するまで外敵から守るという約束で五十一年経った今もあるのだそうだ。
次の連絡船の予約をして建物から出た瞬間、アッシュは肩を落とす。
「もう目の前だって言うのに行けないって」
目的はオノコロノ国だが、それとは別にアッシュはティーダ藩に行くことを楽しみにしていた。ティーダ藩はオノコロノ国であるが、元は別の国で、オノコロノ国とはまた違う文化や建物などがあるらしく、それをこの目で見てみたかった。
敬愛する冒険家カーステンもティーダ藩を訪れ、感銘を受けたと知ってから、ずっと行ってみたかった土地だ。一つ残念なのは、彼が圧倒されたというスイムイ城はエジルバ王国が侵略した際、火事により消失し、もう見ることが出来ないことだ。
「行けないって言ってもあと数日の辛抱じゃん」
「そうなんだが」
わかってはいるのだが、長年行きたいと願っていた場所が目の前にあるのだ。我慢しろというのはアッシュにとって酷な話だ。
落ち込むアッシュの耳に駐屯所専用の船から下りてきた人たちの笑い声が聞こえてきた。
「お前、何? 顔にひっかき傷って。この前、見た時はなかったよな」
「それが、聞いてくれよ。こいつ、ヤろうとした女に抵抗されてこうなったらしいんだよ。ウケるよな」
顔に傷がある男を指差しながら隣にいる男が腹を抱えながら笑っている。笑われた男は睨みながら叫ぶような大きな声を上げる。
「うるせぇよ!! そもそもティーダ藩の人間なんて俺らエジルバ王国の奴隷だろ。俺らがヤりてぇって言ったら喜んで体差し出すのが普通だろう。それを抵抗するなんて、あり得ねぇだろうがよ」
男の叫びを聞いて周りは先ほどよりも大きな笑い声に包まれる。
「いや、抵抗されてんじゃん」
「ダッセー」
「生意気な奴隷はちゃんと躾したんだろうな」
顔に傷がある男は手にした剣を持って自慢気に答える。
「当たり前だろう。剣をちらつかせたら泣いて謝ってきたが、構わず斬ってやったよ。
そのあと、動かなくなって、俺に奉仕出来なくなったが許してやったんだ。
どうだ、優しいご主人様だろう、俺は」
男たちの笑い声は止まず、アッシュたちから遠ざかる。そんな男たちの話にアッシュは眉を顰める。
明日からはいつも通り0時の投稿に戻りますので、よろしくお願いします。




