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自称慎重な冒険者ケビンと仮面の冒険者

 サイクロプスが棍棒を持った腕を大きく振り上げる。

 あ、死ぬな、これ、と思うが、体は動かず、ただ呆然と棍棒を見つめるだけ。

 死ぬのを覚悟したとき、サイクロプスとケビンの間に滑り込むように誰かが入ってきた。

 その人が手にしている武器を振るとサイクロプスは後ろに倒れて動かなくなった。


 何が起こったのか理解が追いつかず、唖然としているとサイクロプスを倒した人から声を掛けられた。


「大丈夫でしたか」


 ケビンの方を振り返った人物は仮面を着けていた。


「は? え?」


 その人物を見て訳がわからなくなった。その人が仮面を着けていたからではない。

 性別が判断出来なかったからだ。中性的な声というわけではないのに男か女かわからない。ならば、体格でわかりそうなものだが、ほどよく筋肉がついた良い体だと言うことはわかるが、それ以上のことは判断できない。


 格好は冒険者のそれのように見えるが、何故かハッキリとはわからない。冒険者だとすれば大半が男なので、おそらく男なのだろうが、それさえもわからないということに頭が混乱する。



 仮面の冒険者は膝をつき、ケビンと目線を合わせて口を開く。こんなにも間近で顔を見ているのにやはり性別はおろか、どんな顔なのかもわかりそうにない。


「人がいるとは思ってなかったので、申し訳ありませんでした。怪我はないようですが、怖い思いをさせてしまいましたね」


 何もかも不明な冒険者だが、物腰は柔らかく、恐怖でへたり込んでしまった情けないケビンにも優しく話しかけてくれる。今日、ケビンを馬鹿にした冒険者とはえらい違いである。


「い、いえ、魔物が出ると聞いていたのに、ここに来た僕が悪いんです。

 あ、怪我はないです、はい」


 怪我はないと聞いて仮面の冒険者は安心したような表情を見せる。いや、正確には仮面で表情はわからないのだが、緊張が緩んだ気がするので間違いないだろう。


「ああ、採取の途中だったんですね。拾うの、手伝います」


 仮面の冒険者に言われて辺りを見るとケビンが採取していた薬草が散らばっている。サイクロプスに襲われる前に鞄の口を開けていたのでそのときに散らばったのだろう。

 仮面の冒険者が薬草を拾っている姿をぼうっと見ていたが、やがて任せてばかりではなく、自分も拾わなければと気がつき、急いで回収する。


「とても丁寧に採取していますね。それぞれの薬草の特色や使用する部位をよくわかってますね」


「え?」


 仮面の冒険者が何を言っているのかわからなかった。採取が丁寧だと褒められたことはあるが、そんなことを言われたのは初めてだからだ。


「たとえば、この薬草、ノピナ草ですが、これは使用する部位が根ですが、根が途中で切れないように慎重に採取したのがよくわかります」


「あ、はい」


「あと、ジニタ草は香りに薬効があるのですが、それを逃がさないために瓶に入れて保存している。わかっていてもなかなかできないことです」


 採取専門の冒険者として他の冒険者と同じではいけないと思ってケビンは薬草の特色や使用する部位などを頑張って学び、採取する薬草によって保存方法を変えている。

 しかし、そんなケビンの努力をわかってもらい、このように褒められたことなどなかった。褒められ慣れていないケビンはなんと答えていいかわからず、照れくさくなった。


「さ、採取専門の冒険者、ですから」


 誰かに褒められて嬉しくて飛び上がりそうになるのを抑えながら出たのはそんな当たり前の言葉だけだった。


「採取専門ですか。これほどよく学び、丁寧に採取出来る人は採取専門であってもなかなかいないでしょうね」


 わかってもらえたのが嬉しくて、どうにかなってしまいそうなケビンのことなどお構いなしに、仮面の冒険者はケビンをなおも褒める。顔がにやけてしまいそうになるのを何とか抑えると、今日の出来事が頭によぎる。







ブランクとしてのアッシュは第三者視点ではどう見えるのかなと思い、出来た話です。

あの仮面を使うとこういう風に見えるのだなとわかって頂けたらと思います。

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