39 頼み事
すぐに呆れて、見放すだろうと考えていたが、アメリアはアッシュが強くなるまで待つと言って一向に手放す気配がない。
そのうちミント、マリーナをミミーの勧めで、パーティーに迎え、ますます手放してくれなくなった。
そして、何故がミント、マリーナの二人にまで好意を持たれるようになった。
このことにアメリアは悋気を抱くのではないかと怯えたが、彼女は初めて友達が出来たことで舞い上がり、どうやら三人でアッシュを共有すると決めたらしい。
そうなれば、アメリアの手前、二人の好意を拒否することもできない。
拒否しようものならアメリアが何をしてくるか、わからないからだ。
アッシュとしては彼女たちのことを仲間としては好ましく思うが、それが恋愛感情によるものなのかと聞かれても首を横に振るだろう。
下手に、期待させてしまうのも彼女たちに申し訳ないので仲間としての接触以上のことはアッシュからは決してしなかった。
しかし、好意を示さないのに嬉しそうな顔をして、誰に何を言われても自分を見放さない彼女たちの姿にどうすればいいのかと悩んでいたときだ。
キースがパーティーに加入したのは。
キースが加入してきてから、アメリアたちはすぐに心変わりをした。
キースは剣の腕も確かで、人当たりも良く、戦闘においても常に冷静で、判断力もあり、リーダーシップもある。
彼女たちに守られるだけのアッシュにも蔑むことなく接してくれる。
そんなキースに優しくされれば好きになるのも当たり前だ。
しかし、心変わりしたにも関わらず、アメリアはアッシュを手放そうとしない。
どうやら、恋情はないが、アッシュはいて当たり前という考えのようだ。
このまま、脱退すると言っても納得しないだろう。納得しなければ、アッシュのことを追いかけてくるかもしれない。彼にとってそれが一番怖かった。
しかし、キースに決めるように言われてようやくアッシュを手放すことに決めたらしい。
彼女自身が手放すと決めたのだ。覆すことはないだろう。
キースは素直に受け取ってくれなかったが、感謝の言葉はアッシュの心からのものだった。
最後のキースの態度は少し驚いたが、彼の太刀筋を見れば、悪い人でないことがわかる。
彼にアメリアたちのことをまかせるのに申し訳ない気はあったが、彼ならば悪いようにしないだろうと感じた。
先ほどまで申し訳ない顔をしていたジョージだが、今はにやにやしてアッシュを見てくる。
「それにしても、俺はついてるな。こんなタイミング良くアッシュがソロに戻るとは」
もみ手をしながら、ジョージはこちらの顔色をうかがうようにしている。
こんなときは決まってろくでもないことを頼まれると決まっている。
「何か、俺に頼み事ですか?」
顔をしかめ、嫌そうな顔をして聞く。
そんな顔をすれば失礼なことはわかっているが、ジョージは何も気にしないので今更だ。
「おう、じゃあ、頼まれてくれるな。A級冒険者、ブランクとして」
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