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38 輝く希望に差す影

 父の知り合いの冒険者たちからアッシュは、冒険者としての心得、刀での戦い方、魔法の使い方などさまざまなことを学んだ。

 ポーターとして彼らの冒険にもついて行った。

 アッシュが見たことがない景色を見て、自分の力でもう一度必ず来ると彼は胸に誓った。



 アッシュが冒険者として独り立ちしても問題ないと認められると、彼らは餞別として魔法(マジック)(バッグ)と同じ収納機能を持つペンダント、彼に合わせた刀などを贈った。

 彼らの側は心地よく、後ろ髪引かれる思いもあるが、冒険者としてひとりで歩むことを選んだ。



 ひとりでの冒険は常に新鮮で何もかもが輝いて見えた。

 冒険をするなかで、魔物を倒すこともあったが、母の言いつけを守り、目立たないように低ランクの魔物だけを狙って倒した。



 冒険者として登録し、数年が経ち、もうすぐD級に上がれるというときにティオルの冒険者ギルドにてアメリアと再会した。

 再会した彼女は誰もが振り返るような美女に成長していた。

 だが、アッシュへの執着するあの目だけは変わらない。


 彼女は自分を待っていなかったアッシュへ不満を漏らしていたが、これからパーティーとして一緒にいられるので許すと言って彼の腕を取った。


 その光景を見た受付の職員、ミミーはパーティー結成おめでとうございます、と言って祝福した。ミミーの言葉にアッシュは目を見開いた。


 通常パーティー結成の紙に名前を書いてギルドに提出することでパーティーが結成される。

 しかし、アッシュはそんな紙に名前を書いた覚えがない。

 何かの間違いではないかと聞くと、ミミーは自分が代わりにサインしたので安心するようにと彼に微笑みかける。


 書類の偽装なので無効だと訴えたが、ミミーの勝手はギルドマスターが認めるものであったため、何も対処してくれず、結局アメリアとパーティーを組むことになってしまった。


 ならば、パーティー脱退だと思ったが、これも上手くいかなかった。

 パーティー脱退の紙にはパーティーメンバーの了承のサインが必要だったからだ。

 サインは一人分でいいが、アメリアが書いてくれるわけがない。

 もし、書いてくれたとしても、自分の勘に絶対的な自信を持ってパーティーを組ませたミミーが却下して、書類は承認されないだろう。


 このまま逃げようかとも思ったが、それも難しいことがわかった。

 ギルドを利用するとそこに滞在したという記録が残る。その記録を調べることでどこにいるのかわかるのだ。アッシュの行方がわからなくなったらおそらくアメリアはミミーを頼るだろう。そして、ミミーはギルドの滞在記録を調べ、アメリアはアッシュの逃げた場所まで追いかけてくる。

 ギルドを利用しなければ逃げ切れるかもしれないが、冒険者である以上必ずギルドを利用する必要が出てくる。

 つまり、逃げたところですぐにアメリアに見つかってしまうのである。



 アメリアが手放してくれるまで、このまま彼女とパーティーを組まなくてはいけない。

 覚悟を決めたアッシュは、母の教えを思い出し、アメリアが見放すような情けない男として、戦うのを止め、ポーターとして彼女に守られるだけの男になることにした。


 彼女はよく二人で一緒に英雄と呼ばれる冒険者になると言っていた。

 一緒に肩を並べて戦うことを理想とした言葉だとすれば、低ランクの魔物も狩れず、彼女に守られてばかりの情けない男になれば、そのうち彼に呆れ、執着することを止めてくれる。


 また、彼女の言動から王子様に守られるお姫様に憧れている印象を受けたので、いけるとアッシュは感じ、実行した。








楽しんで頂けたなら幸いです。

よろしければ評価の方もよろしくお願いします。

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