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257 龍が入った氷

「壊せたんだもん。次は絶対に壊せたんだからね、僕」


「わかってるよ」


 戦斧を持ち、頬を膨らませるヒルデの言葉に相槌を打ちながら歩いていると肌にじんわりと汗が浮かんで来るほどの熱を感じた。むくれていた彼女も異変を感じたのか警戒したような顔になって戦斧を握り直す。


 しばらく進んでいると大きな扉が見えてきた。この中から暑い空気が漏れているようだ。

 後ろを振り返るとアオイが頷いた。そのまま開けろと言いたいのだろう。彼の指示に従いアッシュが力を入れるとゆっくりと扉が開いた。


 開いた扉の向こうには溶岩が広がっていた。冷えて黒い部分もあるが大半は熱を持った赤いものが地面を支配している。それ以外は先ほどムカデがいたような場所と変わりない洞窟の開けたところのようで岩の壁が見える。


 一呼吸するだけで肺が燃えてしまうのではないかと勘違いしてしまいそうになるほどの熱に戸惑いながら頭を上げると奥まったところに鎖や縄のようなもので縛られた黒い龍が目に映った。


「…ヒノカグツチ?」


 その姿はゲンの工房に飾られていた掛け軸に描かれたヒノカグツチに似ていた。

 しかし、今は掛け軸にあったような迫力がなく、力なくうなだれている。黒い龍へと吸い寄せられるように足を動かしていると涼しい風がアッシュの頬を撫でた。


 どこからだろうと周囲を見回すと巨大な氷がいくつも鎮座していることに気が付いた。一番大きな氷の中には龍のようなものの姿が見える。ムカデの時のように(ぬえ)の主によって敵が封じられているのかと警戒するが出て来る様子がない。アッシュが疑問に思っているとヒルデが氷へとおもむろに近づき、手でペチペチと叩いた。


「これ、おかしいよ。こんなに暑いのにちっとも解けてない」


「本当だな」


 それだけではなく、ムカデのような異常な気配が感じられない。

 だが、龍が入った氷はただの氷像にはない、近寄りがたいような独特の雰囲気を醸し出していることから何かあるのだろう。


「ん、あれ?」


 冷気が気持ちいのか、解けない氷を機嫌よく順番に触っていたヒルデだったが、龍が入っているものに触れた時、首を傾げた。


「どうした?」


「なんかこれだけ違う気がする」


 触ってみるように促され、手を置くが彼女の言う違いがアッシュにはよくわからない。アオイにも意見を聞こうと振り向くと驚愕に目を見開いていた。


「アオイさん?」


 異常な様子にどうしたのかと思い名前を呼ぶが、彼はアッシュの声など耳に入っていないかのように呟いた。


「この龍はタカオカミなのか。奥にいる龍がヒノカグツチだとするとそういうことなのか」


 タカオカミとはイザナギによって産み出されたもう一柱の水神だったはずだ。

 まさか、この氷の中にいるのがそのタカオカミだというのだろうか。詳しく聞こうとアッシュが口を開こうとした時、(ぬえ)の鳴き声が響いた。どこにいるのかと辺りを見ても姿は見えない。


「アッシュ君、上!!」


 ヒルデの声に従って顔を上げると壁の空いたところに鵺がいるのが見えた。その近くには氷で出来た檻のようなものが天井からぶら下がっていた。檻には何か入っているようだ。目を凝らしてみると中には力なく、ぐったりとした様子のハヅキがいた。


 こんなに暑い場所では氷の檻などすぐに解けてしまい、溶岩が広がる地面にハヅキが落ちてしまうだろう。一刻も早く彼女のもとに行こうと足を踏み出すと黒い龍に纏わりつく縄が動いた気がした。


 気のせいかと思っていたらアッシュの進行を防ぐように溶岩が噴き出した。避けようと横に飛ぶとそれを予想していたかのように着地予定の場所が再び噴火した。








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