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249 毒の針

「ぅわ、なにあれ。気持ち悪ぅ」


「そんなことを言っているよりも早く攻撃しろ!!」


 誰よりも我に返るのが早かったアオイは紙を取り出して倒したはずの敵に向かって攻撃すると火柱が上がる。その熱により解けた氷によって再び辺りは白い霧に包まれた。

 霧が晴れた後には斬れたはずの胴体が塞がり、最初と変わらぬ姿を見せるムカデがいた。


 敵は牙を鳴らすとアッシュたちに向かって針のようなものを放って来た。再生したムカデに戸惑いながらも彼らは針を避ける。当たらなかったものは地面に刺さると何とも言えない異臭を放つヘドロになった。


 残っている氷に身を隠し、しばらく攻撃を防いでいると針が止んだ。飛び出さずに影から敵を見るとアッシュたちの方を睨むようにしているが動く気配がない。

 どうやら、自分の体を傷つけた彼らを警戒してすぐに仕掛けて来ることはなく様子をみているようだ。


 近くにいたヒルデがヘドロに視線を向けると呟いた。


「毒かな、あれ。ヤバそうな色してる」


「おそらく、そうだな。当たらないように注意した方が良さそうだ」


 氷の影からムカデと睨み合っていると先ほどからアオイが静かなことに気が付いた。ちらっと彼のいる方を見ると氷にもたれ掛かるようにして荒い呼吸している姿が目に映った。顔色も悪く、よく見ると腕の部分が破けている。

 おそらく、先ほどの針が避けきれずに掠ってしまい、毒が回っているのだろう。


「ヒルデ、ちょっと時間稼げるか?」


 首を傾げながらヒルデはアッシュと同じ方を向いた。立っているのも辛そうなアオイの様子から毒を受けたのだと察した彼女はむくれた顔をしながらも頷いた。


「もお、わかった」


 氷から姿を現して自分へと向かって行くヒルデにムカデの視線が釘付けになっているのを確認するとアッシュはアオイに素早く近づき、肩に担いだ。


「お、お前、何を」


 その行動に抗議するように大きな声を上げるアオイを無視し、アッシュは周囲を見渡す。ここでは敵の攻撃を受けてしまう恐れがあるので移動した方がいいだろう。

 ちょうどいい場所にまだ解け残っている氷を見つけたのでそこに連れて行こうとすると心配そうにアオイの顔を覗き込むクズハに気づいた。


「クズハさんもヒルデの手助けを頼めますか。アオイさんは俺が安全な所まで連れて行きますから」


 ヒルデがいくら強いと言っても堅い外殻は傷を付けることが難しい。また、毒の針を放って来るような相手にずっと一人だけで立ち向かえるわけがない。

 だが、クズハのサポートがあれば少しは楽になるだろう。


 アッシュの言葉を聞くとクズハは少し躊躇うが、アオイの顔を見ると鳴き声を上げてヒルデの方に駆けて行った。クズハはヒルデの側まで来ると襲い掛かろうとする敵に向かって火の玉を放る。

 すると突撃しようとした敵は動きを止めて体をくねらせる。ダメージは与えられていないようだが、足止めはできているようだ。


「やるねぇ」


 ヒルデに返事をするように鳴くとムカデを自分たちの方に近づけさせないように次々と火の玉を放つ。敵がクズハに集中している隙に彼女は長い胴体を攻撃するがやはり傷を付けることさえ出来ない。

 だが、今の目的は敵を倒すのではなく、アッシュがアオイを安全な所に連れて行くまで視線を自分たちに向けさせることだ。斬れないのは残念だが、毒のヘドロで足元が悪いものあり、深追いすることはなく、すぐに距離を取る。


「アッシュ君が来るまで頑張ろうね、ワンちゃん」


 クズハが頷いたのを見るとヒルデは戦斧を持って再び敵へと向かって行った。








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