242 均等が崩れた原因
「…今、僕たち元気だけど」
彼の言うことがまだ信じられないヒルデは顔を顰めながら尋ねた。
「それは俺の張った結界が瘴気からお前たちを守っているからだ。信じられないのなら結界から出てみろ」
「むぅ、やったろうじゃん」
すくっと立ち上がったかと思うとヒルデは遠くまで走った。どこまで広いのかわからないが、あれほど離れていたらおそらく結界の外に出ているだろう。
「ほら、大丈夫だもん。やっぱり嘘つきは嘘つきなんじゃん」
平気だとアピールするように元気に飛び跳ねていた彼女だったが、すぐに口元を抑えて物凄い勢いでアッシュの近くに倒れ込んできた。
「うぅ~、なんか気持ち悪いぃ」
「大丈夫か?」
うつぶせになって足をバタバタさせる彼女の背中をさすりながら聞くと返事の代わりに小さく頷いた。目にはうっすら涙が浮かんでいるようだ。
「だから、言っただろう」
頬杖を突きながら唸るヒルデをアオイは呆れた目で見ていた。なおも納得いかないのか彼女はむくれながら呟く。
「嘘つきの言い方だとここに入って色々調べてたってことだよね」
「そうだな。何か気になるのか」
アッシュとしては何もおかしいところなどないような気がするが、ヒルデは引っ掛かるとことがあるようだ。彼女が不満そうに眉間にシワを寄せながらアッシュを見上げる。
「その間ずっと結界張り続けてたっていうの?
だとしたら、相当疲れてるはずなのに嘘つき、ケロッとしてるよ。おかしくない?」
結界は外からの攻撃を防いだりと便利だが、その分消費も激しいはずだ。アオイが使うものは魔法ではないのかもしれないが、そう違いはないだろう。
短時間動き回るだけならば使用し続けるというのも可能かもしれない。
しかし、彼はそれだけではなく、アッシュたちを助けるために戦ったはずだ。結界を張り続けながらそんなことして平気そうにしていられるだろうか。
ヒルデの疑問にアッシュが考え込んでいるとアオイがため息を吐きながら答えた。
「お前たち本当に阿呆だな。瘴気のことについて知っている俺が結界だけを頼りにここに入ると思うのか?
結界とは違う方法で瘴気を防いでいるに決まっているだろう」
「何それ。嘘つきだけズルい」
それほどまでに瘴気に詳しい彼が何の対策もなしにこんなところに入るはずがない。少し考えればわかるはずだったと反省していると今も瘴気に晒されているハヅキは大丈夫なのかと心配になってきた。
アッシュの焦りを察したのかアオイが声を掛けた。
「連れ去られた子供のことを案じているなら安心しろ。その子をまだ連れまわしているということは鵺の目的はまだ達成していないということだ。
それを終えるまでは無事だろう。おそらく、俺と同じ方法で瘴気の対策もしているはずだ」
確かに、アッシュたちをここに誘い出すためだけにハヅキを連れ去ったのだとしたら再び彼らの前に姿を現したあの時に彼女を置いていけばよかったのだ。
なのに、未だに連れまわしているということはアオイの言う通りまだ何かあるのだろう。
「嘘つきがズルして瘴気を防いでることはわかった。けどさ、そもそも何で隠れてるはずの入り口が姿現してんのさ」
結界の中に戻ったことで体調が落ち着いて来たヒルデがアオイに疑問をぶつけた。遠慮のない彼女の言い方に諦めたような顔をしてアオイは答える。
「…どうやら間の世界の均等が崩れたために中の瘴気が溢れ出て龍脈が乱れたようだ。入り口が現れたのはその影響だな」
「均等が崩れた原因の方はわかったんですか」
アッシュの問いかけにアオイは首を横に振った。
「最奥が怪しいということはわかったが、まだ行けていない。
ああ、そういえば、そこに通じる道で生き物を見た気がしたが、今思えばあれは鵺だったのかもな」
「…鵺とその主が最奥で何かしたからこの世界の均等が崩れたということはないでしょうか」
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