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237 襲い掛かる火の玉

 刃が交わる音を頼りに向かっているとヒルデが複数の敵を相手に戦斧を振っているのが見えた。


「ヒルデ!!」


 アッシュの叫びが聞こえた彼女は交戦していた相手の刀を押し返すと他の敵の攻撃を掻い潜りこちらへと走って来る。彼女を追って来る敵に向かってアッシュは手にした植物を投げる。


「――植物(ピアンタ)よ」


 地面に転がった竹は大きくなり、こちらに向かって来ようとしている相手の進行の邪魔をする。邪魔をしたといってもすぐ横を抜ければいいはずなのに敵はアッシュと対峙していた者たちと同じように竹をじっと見ている。アッシュたちを倒そうと集まって来た敵さえ、戦うことを忘れて竹に見入っている。


「どうなってんの、あれ」


「さあな。それより、逃げるぞ」


 後ろを振り返ることなく二人は当初目指していた道へ走った。地震の影響か岩がゴロゴロと転がっていたが、幸い道を塞ぐほどのものではなかった。


「そういえばさ、アッシュ君の草のおかげで助かったよぉ。

 あれがなかったら、僕、岩に潰されてたかも」


「無事でよかったよ」


 怪我はないようだが、顔色が悪いので相当無理をしているようだ。そう思っているアッシュも先ほどから頭痛がひどくなり、耳鳴りまでしてきた。本当は走るのを止めて地面に寝そべりたい。

 だが、敵が後ろから迫って来ている気配がするので今、足を止めるわけにはいかない。


 疲れた体にむち打ち、進んでいるとヒルデの走りが遅くなっていることに気が付いた。


「大丈夫か、ヒルデ」


 心配して尋ねると彼女は荒く息を吐きながら答える。


「…大丈、夫」


 そう言いながらも歩みは遅きなり、急に糸が切れた人形のように倒れた。


「ヒルデ!!」


 地面に転がる彼女に駆け寄ろうとしたのだが、突然アッシュの足の力が入らなくなり、立っていられなくなった。片膝を支えにもう一度立ち上がろうとするが、体は言うことを聞いてくれずに彼もまた倒れてしまった。


 こんなところで横になっている場合ではないと思い抵抗するのだが、アッシュの瞼は重力に従うように段々と下がっていった。




 逃げるアッシュを追いかけて鎧兜を着た数人の敵がやって来た。倒れて気を失っている彼らを見て敵は刀を抜く。そのままアッシュに向かって刃を振り下ろそうとした時、何か模様が描かれた紙が視界の端を横切った。

 それに目を奪われていると突然アッシュを殺そうとした相手が炎に包まれた。肉が焦げる嫌な臭いが辺りに漂うなか、咄嗟に火を消そうと地面を転がるが炎の勢いは変わらず、敵を燃やし続ける。


 敵が動かなくなったことでようやく火が消えた。後に残ったのは黒く燃え尽きた仲間の姿だけだった。それを見て慄いたのか動けずにいる彼らの耳に何者かの声が聞こえてきた。


「――やれ、クズハ」


 何が起こったのかと未だに混乱する彼らに火の玉が次々と放たれる。自分たちに襲い掛かる火の玉を見て先ほどの仲間のようになりたくないと蜘蛛の子を散らすかのように彼らは逃げ戸惑った。

 そんな彼らを嘲笑うかのように火の玉は執拗に追いかけまわす。


 やがて火の玉がすべての敵を殲滅するとようやく声の主が現れた。側に座る狐の頭を撫でるとアッシュの方へと歩いていく。倒れ伏している彼を見下ろしながらアオイは紙を取り出した。


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