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235 鎧兜の敵

 ここは引かなければいけないとわかっていてもまだ納得いかないという顔をしているヒルデと残っている道を調べる。


「あっちはダメだな」


 道の一つからは敵意を持った集団の姿が見えるので避けるべきだ。そこが使えないのならば残っている道は二か所だ。


「こっち、行けそうだよ」


 敵がすぐそこまで迫って来ているので迷っている時間はない。アッシュは頷くと彼女が指差す道を目指して走った。

 目的の道に着くとアッシュは慎重に中を覗き込んでみた。目に映るのは岩ばかりで敵の姿は見えないので胸を撫で下ろした。


「大丈夫そうだな」


「じゃあ、このまま駆け抜けて進もう」


「そうだな」


 アッシュたちがもたもたしている間に(ぬえ)は随分先に進んでいるだろう。今から追いつけるのかと不安になりながらも一歩足を踏み入れたその時、大地が大きく揺れ動いた。


「うわぁ、なにこれ」


 あまりのことに二人は立っていられなくなり、地面に倒れ伏した。揺れたことで崖が崩れたのか岩が落ちる音がする。アッシュは咄嗟にペンダントを握り、種を取り出すと自分とヒルデの方に投げた。


「――植物(ピアンタ)よ」


 彼が魔法を唱えると種が芽吹き、成長すると二人を包むようにドーム状へと変化した。攻撃を吸収するという植物なのだが、岩の衝撃も防ぐことが出来るかはわからない。

 だが、やらないよりいいだろうと当たらないことを祈りながら頭を守る。




 揺れたのは、ほんの数秒の出来事だったのかもしれない。

 だが、アッシュにとっては何時間とも感じるほどのものだった。揺れが収まったのを確認するとうるさいほど拍動する心臓の音を聞きながら手を突いて立ち上がる。


 アッシュを守っていた植物は力を入れると簡単に切れ、青々としていた緑の葉が茶色に変色して風に舞った。役割を終えて枯れるにはあまりにも早すぎるのでここが草木も生えないような場所だからかと疑問を抱いたが、考えるのは後にした。


 何もなかったはずの周囲には大小さまざまな岩がゴロゴロと転がっており、ひどい有様になっている。アッシュの上にも岩がいくつか落ちてきたのだが、魔法で成長させた植物のおかげで傷一つない。


「ヒルデ、大丈夫か!!」


 自分が怪我をしていないのでヒルデも無事だと信じている。

 しかし、一向に彼女が姿を見せないことが心配になり、アッシュは声を上げた。

 すると大きな岩の陰から何かが見えた。彼女かと思わず近寄ろうとした時、嫌な気配を感じた。


 咄嗟に後ろへ飛ぶと急に岩が二つに斬れた。分かれた岩の向こうにはあの鎧兜の敵がアッシュへと武器を構えていた。


 彼が相手を睨みながら刀へと手を伸ばそうとした時、今度は背後から気配を感じて横へと避けた。風を切る音がしたと思うとさっきまで自分がいた場所に地面に矢が刺さっているのが見えた。矢が向かって来た方に顔を向けると目の前の敵と同じ格好をして弓を構えた人のようなものが目に映った。


「…戦うしかないのか」


 気が付けば周囲を落ちてきた岩と敵に囲まれていた。全てを倒す必要はないが、逃げるためにも数を減らさなければいけないだろう。

 再び飛んできた矢を素早く抜いた刀で斬り落とし、迫って来た刃を受け止める。動けないアッシュを狙って別の敵が攻撃して来るのが見えたので刃を押し返して距離を取る。


 乗り切れたと安心しているところにまた矢が向かって来たので飛んで躱す。避けた場所では彼を待ち構えていた敵が刀を振り上げているのが見えた。


「気が抜けないな」


 攻撃が読めていたアッシュは刃が自分へと振り下ろされる前に相手の無防備な胴に向かって刀を下から上へと振った。

 すると彼の刀によって鎧兜が斬り裂かれ、隠れていた相手の素顔があらわになる。その顔を見てアッシュは息を呑んだ。


「人、じゃないのか?」







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