22 誰が
ミントの魔法により拘束され、自分を倒そうとアメリアたちが迫っていると言うのに、ブラックウルフのリーダーは余裕の笑みを浮かべている。
何故かと疑問に思ったが、今が好機だと考え直し、リーダーを倒すために歩みを止めずに走った。
もう少しでリーダーのもとまでたどり着けるというところでアメリアたちの前にまだら色をしたブラックウルフが立ちはだかり、自分の周りに火球を浮かべ、その火球を彼女たちに向かって放ってきた。
なんとか火球の攻撃を避けるが、避けた先にまた、まだらのブラックウルフの火球が襲いかかる。
襲いかかる火球を避けることに必死で、アメリアたちはそれ以上前に進めない。その間にリーダーはミントの魔法の拘束を解いてしまった。
しかし、リーダーはその場を動こうとせず、嘲笑うかのようにこちらを見ている。
火の魔法を使うブラックウルフがいるかもしれないと聞いていたが、それらしい魔法を使うものがいなかったので間違いかもしれないと思っていた。
もし、魔法を使ったとしても、でたらめに放ってくるだけだと思っていた。
しかし、まだらのブラックウルフはこちらを正確に狙って魔法を使っている。リーダー以上に厄介な敵だ。
アメリアたちの方に火球が飛んでこなくなったと思ったら、ブラックウルフたちに囲まれてしまった。
魔法で一掃したと思っていたが、まだこんなに数が残っていたのかとアメリアたちは、動揺した。
アメリアは、なんとかキースと二人で戦っているが、如何せん数が多い。
どうすればと思ってると、強い火の光と熱を感じた。見ると、まだらのブラックウルフがこちらを攻撃したときよりも大きな火球を生み出していた。
なんとかして魔法を使わせないようにしなければと思うが、周囲のブラックウルフが邪魔をして近づくことができない。
やがて、魔法ができあがったのか、まだらのブラックウルフがこちらを見て嗤った。
こちらへ打ってくると思い構えるが、魔法はアメリアたちではなく、ミントたちの方に放たれた。
まだらのブラックウルフが魔力を練っているのを感じたミントは打ち消してやろうと古代エルフ魔法を詠唱していた。マリーナの結界を破壊しようと再び現れたブラックウルフたちが攻撃しているが、先ほどよりも数が少ないので集中して詠唱することができた。
もう少しで詠唱が完了するというところでまだらのブラックウルフがこちらへ魔法を放ってきた。
目を丸くして、ミントは呆然と火球を見た。
ミントたちを攻撃するブラックウルフは密集しており、魔法で攻撃をすると味方をも巻き込んでしまう。
味方を犠牲にして、こちらを攻撃してくるとは思ってもなかったのだ。ブラックウルフたちも自分たちが味方に攻撃されると思っていなかったのか、火球がこちらへ向かってくるのをただ見ていることしかできなかった。
「――炎よ、消え去れ、消火」
ミントは急ぎ詠唱を終えると攻撃してきた火球に魔法をぶつけた。
しかし、急いで詠唱したため不完全だったのか、彼女の魔法を受けても火球の勢いは衰えず、味方のはずのブラックウルフを巻き込み、結界にぶつかった。
ぶつかった衝撃で結界は破壊され、大きな爆発を起こした。その爆風を受け、ミントだけ遠くに投げ出されてしまった。
―――植物よ。
投げ出されたミントの耳に魔法を唱える声が聞こえた。声の主は低く、男性の声のような気がした。
しかし、魔法を使えるのはミントとマリーナだけだ。
では、誰が?
書き溜まっており、明日は祝日なので1日2回 0時と12時に投稿します。
楽しんで頂けたなら幸いです。
よろしければ評価の方もよろしくお願いします。




