15 作戦会議
依頼を受けたアメリアたちはさっそく情報を集めた。
最初は何も情報は無かったが、しばらくするとブラックウルフのような魔物が最近になってある森に現れるという話を聞いた。
他のブラックウルフの可能性も考えたが、目撃書に軽傷を負わせるだけでそれ以上はしないということを聞き、その挑発ともとれる行動から依頼された集団であるとアメリアたちもギルドも結論づけた。
ギルドからは準備ができ次第討伐に行くように言われている。ギルドも軽傷を負わせるだけで何もしないブラックウルフを不気味に思っているらしく、何か起こる前に早く討伐してほしいようだ。
「私は一匹も逃さず討伐したいと思ってるけど」
マッドボアの一件を反省したアメリアたちは討伐前に拠点で作戦会議をするようにしている。マッドボアの前もしていたが、そこまで真剣にしていなかった。
しかし、こうしてしっかり作戦会議をするようになって以前は苦戦していた魔物相手でも難なく討伐出来るようになった。
「ブラックウルフの特性を考えるとリーダーの考えに従って他のブラックウルフは行動している。
こちらを挑発するような行動を取っているのもリーダーの考えによるものだとしたら、リーダーがいなくなれば他のブラックウルフは統率が出来なくなることで混乱し、弱体化する。そうなれば躍起になって全てを倒そうとしなくてもいいはずだ」
こうして会議をして他の人の考えを聞くことでアメリアはいろいろ考えさせられた。
会議をする前は自らの力を過信し、考えなしに戦っていた。自分では仲間を守って戦っていると思っていたが、その自分勝手な行動が仲間を危機にさらしていたと知ることが出来た。
「僕とアメリアが他のブラックウルフを倒しながらリーダーの元へ行き、奴を倒すと言うのが理想なんだけどね」
「でも、キース、そいつらもリーダーがやられるとまずいことはわかってるんだから、守りは堅くなるんじゃない?
簡単にリーダーの元に行けるとは、ミントは思わないな」
「僕もそう思う。だから、他のブラックウルフを倒しながらリーダーの元に向かうと見せかけて、ブラックウルフを一カ所に集める。
そこにミントが魔法を使ってブラックウルフたちの数を減らして欲しいんだ。
被害に遭った冒険者によるとブラックウルフたちは二十匹ぐらいだそうだから運が良ければミントの魔法だけで全滅させられる。
そうじゃなくても数さえ減れば守りは崩れ、一時的に統率が乱れるだろう。その混乱に乗じて、リーダーを倒す。
心配しないで。ミントが詠唱をしている間、アメリアと僕が必ずミントを守るから」
キースとアメリアに守ってもらわなければいけないということが、ミントは守られる弱い存在だと言われているようで、なんともいえない不快感がこみ上げて、思わず彼女は 顔をしかめてしまった。
「私たちなら大丈夫よ、ミント。前のマッドボアの時みたいな、みっともないことはもうしないから」
アメリアたちを心配している訳ではなかったが、ミントの顔を見て以前のことを思い出していると彼女は思ったのだろう。
本心を言うわけにもいかないと思ったミントは言葉を飲み込み渋々頷いた。
「それでは私はキースさんとアメリアさんに防御をあげる魔法を切れないようにして、私の周りに結界の魔法を掛けます。
そうすれば、アメリアさんたちがミントさんを気にせずに戦えるでしょう。
それに、何かあれば私の近くに来ていただければアメリアさんたちも守れます。
ミントさんとアッシュさんは私から離れないでください」
「でも、マリーナ、それって魔力を大量に消耗するんじゃ」
アメリアにマリーナはいつもの変わらない笑顔を向けた。
「確かにいつもよりも大量に消耗しますが、皆さんに全員にかけるよりも消費は少ないです。もちろん、皆さんを回復する分は残すのでご心配なく。心配なのは私よりも」
マリーナはアッシュへと目線を向けた。いつもは彼もポーターとして討伐に連れて行っていたが、今回は何をするかわからない魔物が相手だ。
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