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13 ブランク

「失礼します。『四本の白きバラ』の皆さんを連れて参りました」


「おぉ、待っていたよ。入ってくれたまえ」


 ドアを開けると先ほどまで怒っていたとは思えないほどの笑顔でマテオは執務机に座ったままアメリアたちを出迎えた。


「怒鳴り声が廊下まで響いていましたよ、マテオさん。ミミーさんも泣きそうでしたし、何があったんですか」


 キースの言葉にマテオは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに笑顔に戻った。


「すまない、聞こえていたか。

しかし、君たちに話そうとしていたことにも関係していることなんだ。まぁ掛けなさい」


 指示に従いアメリアたちはソファに腰掛けた。

 しかし、アッシュは以前と同じくドアの近くで立っている。

そのことに、もう彼女たちに罪悪感は無く、当然のように受け入れていた。

 座ったのを確認するとキースは口を開いた。


「マテオさん、何者なんですか。そのブランクというのは。

 誰だかわからないと言っていたようですが、そんなことあり得るんですか」


 冒険者になるには冒険者ギルドに登録する必要がある。登録するときに名前などを記入する必要があり、記入することでギルドの名簿に記載され、冒険者カードが配布される仕組みだ。名簿を見れば簡単に冒険者のことを知ることができるのは誰もが知っていることだ。


「名簿を調べたがA級冒険者で、高ランクの魔物の討伐記録はあるが、名前などの欄が空白なんだ。

 故に空白(ブランク)と言われているらしい。ギルドの幹部が関わっているためそれが可能になったようだ」


 怒っているのか、マテオの顔は赤くなり、拳は強く握っているためかブルブル震えている。


「そのブランクが主に拠点としているのが、あの冒険者上がりのジョージがギルドマスターの街だ」


 ジョージはかつてA級冒険者として活躍していた。

 しかし、突然冒険者を引退し、冒険者ギルドに職員として就職したかと思うと、あれよあれよという間に昇進し、今はシヴァン領の領都ルノアという街のギルドマスターとして勤めている。

 マテオは元A級冒険者というだけでギルドマスターになり、ギルドに評価されているジョージが気に食わず、ジョージを目の敵にしているのはこのギルドでは有名な話だ。


ちなみに、ここ、ティオルはロウダ領にあるのだが、領都ではなくロウダ領のなかで二番目に大きい街だ。

ジョージが自分よりも大きな領、しかも領都のギルドマスターを勤めていることもマテオは気に入らないのだ。




「しかも、周辺の街を荒らしていた厄介な魔物を倒したということで感謝され、ルノアの街やその周辺ではブランクは今やちょっとした英雄だ」


 話すことで怒りが増してきたのだろう。マテオは大きな音を立てて執務机を叩き、立ち上がった。


「おかしいだろう。名前も明かせない後ろ暗い冒険者が英雄など。

 しかも、ブランクの情報の隠匿に関わっていると思われるジョージの評価が上がっているなど、認められるわけなどない。

 高ランクの魔物討伐も、偽りの英雄を作り、ギルド本部に評価されるためにやつが不正を行ったに決まっている」


 マテオの目は血走り、薄い頭からは湯気が出ていると思うほど真っ赤になっている。それは海に出るというデビルフィッシュが茹で上がった姿によく似ていた。


 アメリアたちはまた、マテオのジョージの対抗意識がでているのかと呆れた。

 ジョージへの対抗意識からマテオに無茶な依頼を受けさせられたのは一回や二回では済まされない。

 そのたびにマテオに抗議するのだが、彼は聞く耳を持たず、また、無茶な依頼を持ってくる。そのたびに、今のようにジョージの妬みを聞かされていたのだが、キースが来てからそれがなくなっていたので油断していた。


「君たちも悔しくはないかね。不正を犯している者が英雄など言われ持て囃され、評価されているんだぞ。

 君たちのように実力のある者こそが英雄と呼ばれるにふさわしく、ましてや評価されないなどあってはならない、そうだろう」








デビルフィッシュとは蛸ことです。念のためお伝え致します。

楽しんで頂けたなら幸いです。

よろしければ評価の方もよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
3人娘は井の中の蛙感がすごいある。頭がお花畑。 夢見る田舎娘が詐欺師に騙されるイメージ。 おそらくパーティー以外の人とか見向きもせず、 自分たちの世界でやってきたツケなのかな? 今回もそうだけど ど…
なんかもうアッシュが「出て行きまーすッ!」って言えば誰も引き止める人居なくて自由になれそうなのに追放待ちなのが謎ですね〜
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