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121 脈打つダンジョンコア

「それにしても、これマズくない?」


「…マズいな」


 敵を倒せたことで忘れていたが、壊れた壁から海の水が止めどなくこちらに流れており、もう腰の近くまで来ている。


「前にボスを倒したらダンジョンが修復したから壁ぐらい壊してもすぐに直るだろうって、僕、思いっきりやったんだけど」


「修復する気配、ないな」


 時間が掛かるのだろうかと思ったがいくら待っても壁は壊れたままで、水は止まることなくアッシュたちのいる部屋に流れている。


 もしかしたら、メガロオドンシスがボスではなかったのではないかと思ったが、他に敵の気配はなく辺りは静かだ。部屋も何も変化はなく、外に出るための転移の魔方陣がある扉が新しく現れるということもない。


「天井の方に何かないか見てみるか。どの道ここにいても凍えて動けなくなるだけだ」


 そう判断して植物を取り出そうとしたとき、二人は最初に来たときと同じ清浄な眩しい光に包まれた。




 目を開けると立派な木の柱が見える。ここは拝殿だと気がついたが魔物が出現した場所も同じような作りだったのでまさか戻されたのかと思ったが、柱が壊れているなど廃墟のような様子はなく、正面にはしめ縄で堅く閉じられた扉が見えるので最初のところに戻って来られたのだと胸を撫で下ろす。


「あ、あれ!!」


 突然声を上げたヒルデが指差す方に顔を向けるとリボン状の赤いヒレを持つあの魚が現れた。魚はアッシュたちの方をじっと見るとゆっくりと背を向けて正面の扉に入る。すると、しめ縄が外れて床に落ちると扉がひとりでに開いた。


「また、入ってこいってこと?」


「危険はないと思うが、警戒したほうがいいかもな」


 もうボスは倒したはずだが、何か嫌な気配があの扉の奥からする。ヒルデも同じことを思ったのか戦斧を構えて頷いた。


 扉を潜ると壁のような岩が一面にあり、触ると湿っていて冷たく、まるでミバルの街のダンジョンで見た鍾乳洞のようになっていた。


「ヌシンさんが言ってたな。鍾乳洞の奧に社がある珍しい神社だって」


「じゃあ、やっぱり、ここはなくなったはずの神社ってことだね」


 そんな神聖な場所のはずなのに前に進むにつれてあの纏わり付くような嫌な魔力が強くなっていく。魔物の気配はないのに何故と首を傾げながら慎重に歩いていると大きな扉が見えてきた。アッシュはそれを見た瞬間、言葉を失った。


「うわぁ、何あれ。気持ち悪ぅ」


 扉の中心には赤い石がはめ込まれているのだが、それから細い管が伸びて血管のように張り巡らされて脈打っている。


「まさか、あれはダンジョンコアなのか」


 そういえば、コアが埋め込まれているはずのモノリスを見ていない。あの扉がその代わりだということなのか。

 アッシュがそんなことを考えていると血管のような管が彼らに襲いかかってきた。

 だが、チューブ・ジェリーフィッシュのしなる鞭のように厄介な攻撃に比べ、動きが読みやすく、やけになって管を振り回しているようなものが彼らに当たるはずがない。


「もう、往生際が悪いね」


 軽々と攻撃を避けたヒルデは管に向かって大きく戦斧を振った。その一振りでこちらに向かって来たほとんどの管が斬られた。そのことで動揺したのか、怯むような素振りをするダンジョンコアにアッシュは刀を薙ぎ払う。

 コアは音を立ててヒビが入ると赤い色が失われて壊れた。あまりの呆気なさに二人で顔を見合わせていると眩しい光が辺りを包んだ。







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