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118 絶滅した鮫

 鮫を見て呟くヒルデから知っていることを聞きたいが、敵はそれを許さないというようにアッシュに襲いかかってくる。何とか躱すが、メガロオドンシスはすぐに彼に飛びかかる。

 敵が速いために反撃することが出来ず、回避することに専念することだけしか出来ない。


 彼だけしか見えていないメガロオドンシスに向かってヒルデが戦斧を振るが、凄まじい速さで躱されて擦ることさえ出来ない。

 アッシュに噛み付こうとしていた敵は自分に攻撃してきた彼女に気づくとと標的を変えて向かって来た。


 噛み砕こうと大きく口を開く敵にヒルデは近くに落ちていた大きな柱を投げ入れる。すると、柱は口の中につっかえ棒のようにはまった。メガロオドンシスは鬱陶しそうに首を振り、外そうとするが、上手くいかなかった。


 敵が口に入った柱に注意が逸れた隙を狙い、アッシュは刀を振るうが分厚い皮膚を僅かに傷つけることしか出来なかった。続けてヒルデもメガロオドンシスに向かって戦斧を振り下ろすが、大したダメージしか与えることが出来なかった。


「ちょ、こいつ堅い」


 自分が攻撃されたことに気がついた敵はその強靱な顎で口の中の柱を噛み砕き、赤くぎらつく目でこちらを見ると体に膜を張り、水に潜って姿を消した。


 どこから攻撃してくるかと二人が辺りを警戒していると、ヒルデの足下から嫌な気配がした。彼女が下を見ると大きく口を開けた敵が迫って来ていた。咄嗟に横に飛んで避けることが出来たが、敵の歯がわずかに擦り、足を負傷する。


 敵は続けて彼女の方に飛びかかってきた。ヒルデは避けようとしたが、怪我をした足では十分躱すことができずメガロオドンシスが目の前まで迫る。


「っ!!」



 彼女が攻撃を避けきれないと気がついたアッシュは敵より速く彼女に近づいて腰を掴み、天井の剥き出しの柱に向かって手を伸ばした。


「――植物(ピアンタ)よ」


 成長した蔓は彼の腕と柱に絡みつき、敵の攻撃を受ける前に天井へと舞い上がった。

 避けられたことに気がついたメガロオドンシスは彼らの姿を探すが見つからない。見失ったのだとわかると周辺をウロウロと旋回するように泳ぐ。


「ごめん、助かった」


「それより、何か知ってるのか。あの鮫について」


「あれ、たぶんメガロオドンシスだと思う。遠い昔に絶滅したって聞いたけど」


 下を見る彼女につられて同じように顔を向けると、メガロオドンシスは彼らがここにいることを確信しているかのように場所を変えずに真下を泳ぎ続けている。


「あんなに強いのに絶滅?」


「海面温度の低下とか競争に負けたからとか色々言われてるらしいけどね」


「なあ、ヒルデ。どうにかしてアイツの動きを抑えられないか」


 メガロオドンシスは恐ろしいほどの速さで迫ってくるため回避することに必死になり、ろくに攻撃することが出来ない。

 なので、その速ささえどうにかしてしまえば何とかできるかもしれない。あの分厚い皮膚も何度か攻撃すればダメージが通るだろうと考え、彼は提案した。


「…アッシュ君が時間、稼いでくれれば」


「わかった。任せろ」


 自分の手に絡みついている蔓を彼女が掴んだことを確認するとアッシュは敵から離れた場所へ降りる。その音に反応するかのようにメガロオドンシスは彼の方へと向きを変える。自分を認識したと確認した彼は敵に背を向けて廊下へと走り出した。




 敵はアッシュを追って廊下に来たが、彼の姿を見失ってしまった。どうやら数ある部屋のどこかに逃げ込んだようだ。メガロオドンシスは鼻を使って血の匂いを嗅ぎ取り、それがする方向へと泳いだ。匂いがする部屋は閉まっているのだが、そこだけ明るく、中から灯りが漏れ、彼らしき影も見える。

 ここに間違いないようだと確信した敵は扉を破り、アッシュに思いっきり噛み付いた。







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