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114 光のない深海へ

 避けられたことを理解したヒルデは周囲を見回すのだが、姿はどこにも見えない。


「…下?」


 奇妙な気配を感じたので下を向くと暗い海の中を白く大きな物体が泳いでいる。それはアーキテウティスだった。


「ヒルデ、敵は?」


 近づいてきたアッシュに彼女は下を指差す。


「逃げられた。今は海の中にいる」


 彼も思わず下を見て、目を見開いた。アッシュたちが立っている床は透明な板のような物が敷き詰められ、その下に海が広がっていたのだ。

 ヒルデが戦斧を大きく振り上げて床を壊そうとするが、ヒビすら入ることはなかった。


「こんなのどうすればいいのぉ」


 床を壊そうとした衝撃か、彼女の声が聞こえたのかはわからないが、アーキテウティスはこちらに向かって泳いできた。

 水の中から出てきた触手が襲ってくるが、二人は何とか避ける。


「触手だけ出てきても、ね」


 避けながらヒルデは触手に向かって戦斧を振り下ろす。アッシュと違って斬り落とすことが出来たが、それに激高したように他の触手が彼女に向かって来る。数が多いので無理に攻撃しようとせず、避けることにして距離を取る。

 その間、本体は一向に姿を見せず、海の中に潜っている。


 敵の攻撃対象から外れているアッシュは彼女を攻撃しようとする触手に刀を振る。ヒルデのように斬り落とすことは出来なかったが、触手はわずかな薄皮で繋がっているだけという状態にするまですることができた。


「よし」


 このまま二人で触手を斬り落としていけば、やがて本体も出てくるかもしれないと希望が見えてきた。そう思うアッシュにわずかな隙が生まれる。それを見逃すほど甘い敵ではなかった。

 まだ水から出ていなかった触手が、音もなく彼の背後から急に現れ、攻撃しようと向かって来たのだ。


「っ!!」


 迫ってくる触手を避けられないと判断し、咄嗟に受け身を取るが、勢いは凄まじく、アッシュは二階まで吹き飛ばされてしまった。

 部屋の扉などに当たりながら中まで飛ばされ、壁に激突することでようやく止まることが出来た。


「斬れたことで油断した。本当にまだ未熟だな、俺は」


 怪我で痛みはあるが二階ならば敵も来ることが出来ないだろうと、一先ず安心し、何とか立ち上がろうとアッシュが床に手をつくと二階の部屋も水が張られているのに気がついた。


「何で二階なのに水が」


 不思議に思い、下を見ると水の中から突如触手が出てきて彼に巻き付いた。

 おそらく、アーキテウティスは水があればどこでも移動することができる力があるのだ。二階も水が満たされていたのはこのためだったのだろう。

 海の中を移動できるだけならば、二階など敵に不利な場所など用意されているはずがない。


「うぐぅ」


 こんな危険な状態になるまで、その考えに思いつかなかった自分の間抜けさに呆れるが、それはあとにし、何とか抜け出せないかと藻掻くが、拘束が強くなるだけで苦しさに思わず目を閉じる。

 そのとき、アッシュの耳に誰かが床を走る音がした。


 目を開けると彼を縛る触手を斬ろうと戦斧を大きく振りかぶるヒルデの姿が見えた。攻撃が当たる前に横から別の触手が邪魔をするように向かって来る。それにすぐに気がついた彼女は構え直し、自分に迫ってくるそれを斬り落とした。

 その間に彼を拘束する触手は彼諸共、水の中に潜ろうとしていた。


「アッシュ君!!」


 彼の目にこちらに向かって手を伸ばすヒルデの姿が映った。


「ヒル、デ」


 その手を取ろうとアッシュも手を伸ばしたが、届く前にアーキテウティスによって海に引きずり込まれてしまった。







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