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106 小さく白い魚

 そのまま、本能に従って近くの岩に転がり込むようにして隠れる。すると、ゼンゴ・ソウ・フィッシュたちは口の前で水の球を作り、それを彼が隠れる岩目がけて次々と打ってきた。

 どうやら、魔法で作ったもののようで岩の端に水の球が当たると、貫通してえぐれた。


「っ!!」


 水の球の威力を見て危険を感じたアッシュはしゃがむことで体を小さくし、攻撃が止むまで耐える。

 だが、隠れている岩は削られてどんどん小さくなるためいつまで耐えられるかわからない。


 そのことに気がついたヒルデは、彼に攻撃することに集中しているゼンゴ・ソウ・フィッシュの元に素早く走り、ストロング・ジョー・フィッシュを倒したときのように平らな斧刃で薙ぎ払う。彼女の接近に気がつかなかった敵は攻撃を受け、大きな魚のような形が崩れた。


「え!?」


 黒く、小さいゼンゴ・ソウ・フィッシュの集合体だと思っていたが、その中心にいたのは真っ白な魚だった。驚きに目を丸くしていると、あっという間に白い魚を守るように覆い隠されて元の大きな黒い魚へと戻り、今度は彼女へと水の球を打ってきた。


 次々と水の球が自分に向かって来るのが見えたヒルデは当たらないように走りまわる。何とか当たっていないが、一向に止まぬ攻撃を避け続けるのは難しいだろう。


「もぉ、しつこい!!」


 文句を言える余裕はあるようだが、それも時間の問題だ。アッシュは敵に近づき、種をばらまく。


「――植物(ピアンタ)よ」


 目の前に攻撃を遮る草の壁が急に現れ、邪魔されたことによってゼンゴ・ソウ・フィッシュたちはヒルデの姿を見失った。辺りを見回しても見つからないため標的をアッシュへと切り替えた。自分を攻撃するつもりだと気づいた彼は背を向けて先ほどと同じ種をばらまきながら走った。

 ヒルデの時のように逃がしはしないというように彼を狙って水の球が迫ってくる。


「――植物(ピアンタ)よ」


 魔法を使うと彼を守るように草の壁が現れて攻撃が防がれた。上手くいかないことに苛立ったような様子を見せるゼンゴ・ソウ・フィッシュだが、何故か周囲をウロウロと彷徨うだけで彼を追いかけてくることはなかった。




 後ろから敵が来ないことに首を傾げながら、彼女を探しながら走っていると声を掛けられた。


「アッシュ君、こっち」


 大きな岩陰に隠れていたヒルデが立ち上がり、彼へと手を振っているのが見えた。


「ヒルデ、無事か?」


 所々服が破けているようだが、見た目は大きな怪我はしていないようだ。


「服が擦っただけで大丈夫。それより、追ってこないね」


 姿が見えないだけかとも思ったが、敵は同じ場所から動いていないことがわかった。追ってこないのはいいのだが、ゼンゴ・ソウ・フィッシュは階段の周囲を警護しているように泳いでいる。


「下に行くにはどうにかする必要があるな」


「アイツを倒さないで階段を降りるって言うのは?」


 あの敵を倒すには魔法を使うべきだと思うが、二人とも直接的な攻撃魔法は使うことができないので倒すよりも逃げ切るほうがいいのはアッシュも理解しているのだが。


「ダンジョンにいる他の魔物と違ってフロアボスだからな。俺たちを倒すまで追いかけてくる可能性がある」


「…ここで倒さなきゃダメってことだね」


 道がわからないことに加えて下にいる魔物と戦いながら逃げるというのは難しいだろう。

 もし、逃げ切れたとしても次のフロアボスと戦っている際に追いつかれでもしたら両方の相手をしなければならない。ただでさえ厄介なフロアボスを二体も相手にするのは危険であることは考えなくてもわかる。

 なので、下に行くのならば確実に倒さなければならないのだ。







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