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104 補い合うことが仲間

 先ほどの渡り廊下よりも広いので武器を振るのに支障がないことに安堵し、警戒しながら進むと左右の障子を同時に破って数十匹のストロング・ジョー・フィッシュが鋭い歯を持つ口を大きく開けて飛びかかってきた。


 アッシュは後ろに飛ぶことで避ける。攻撃を避けられたストロング・ジョー・フィッシュは下に張られた水に潜り、今度は正面から襲ってきた。

 姿を見極め、刀を素早く振るが敵の体が小さいために全ては倒しきれず、歯が擦った部位から服が破ける。生き残ったストロング・ジョー・フィッシュが再び飛びかかってくるのが見え、刀を構える彼の前にヒルデが割り込んできた。


「ヒルデ!?」


 向かって来る敵を彼女は斬るのではなく、戦斧の平らな斧刃の部分で薙ぎ払う。斧刃に当たったストロング・ジョー・フィッシュは壁に叩きつけられて動かなくなった。


「悪い。助かった」


「アッシュ君の武器じゃ、こいつらとの相性悪いね。服が破けてるけど大丈夫?」


「血は出てないから怪我はしてない。大丈夫だ」


 派手に破れている部位もあるが、痛みも血も出ていないことを確認したアッシュは倒した敵に近づき、手を合わせたあとでペンダントに収納する。


「だが、厄介だな。もし、同じ敵が出るのなら、俺は役に立たない」


 この先に複数の魔物の気配がする。気配から察するにおそらく、ストロング・ジョー・フィッシュだと思うが、同じように襲ってこられたらアッシュでは対処するのが難しいので、ここを抜けるまで彼女に頼ることになるだろう。


「じゃ、僕が先頭ね。打ち漏らしは頼んだよ」


「頼んだ。俺は、ここではそれぐらいしか出来ないみたいだ。不甲斐なくて悪い」


 情けなさで頭を掻き、謝る彼をヒルデは何てことないという顔で笑う。


「苦手なことを補い合うのが仲間でしょ」


「それはわかってるが、気持ち的にな」


 長い間一人で色々熟してきた彼としては、まだ人に任せるということに慣れていないのだ。


「気にしない、気にしない。では、僕のあとに付いてきたまえ」


 重いはずの戦斧を振り上げて、ヒルデは得意げにこちらを見てくる。アッシュが気に病まないように彼女はわざと明るくおどけているのだとわかった。

 そんなヒルデに軽口で返事をすることで彼なりの感謝を伝える。


「では、先導をお願いできますか、お嬢さん」


 冗談で返されるとは思っていなかったのか、彼女は目を丸くすると笑顔で答えた。


「任されよ~」




 ヒルデを先頭に進むと、やはり、同じように障子を破ってストロング・ジョー・フィッシュが現れるが、彼女は焦ることなく戦斧を振って対処する。仕留められなかった敵はアッシュに襲いかかるが数匹なので難なく倒すことができた。


 それを数回繰り返すことで奧まで来ることが出来たようで扉が見えてきた。最後の障子の近くまで歩いていると今までとは違う気配を感じる。

 警戒しながら行くと、ヒルデは何かに足を取られた。下を向くと水の中から突然現れたアルマータ・カラッパがその大きなハサミで彼女の靴を挟むことで動けないようにしていた。

 ストロング・ジョー・フィッシュは彼女が避けられないのを知っているかのように障子から勢いよく襲いかかってくる。


 捕まれた靴を脱ぎ捨て、ストロング・ジョー・フィッシュへと戦斧を振る。ヒルデを逃がしたアルマータ・カラッパは水から完全に姿を現わし、彼女にハサミを振り下ろすが、その手は急に消えてしまった。

 後ろに構えていたアッシュに斬られたのだ。ハサミは大きな水音を立てて落ち、彼を警戒したアルマータ・カラッパは二人から距離を取った。







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