11 心変わり
『四本の白きバラ』にキースが正式に加入してからしばらく経った。
前衛が二人になり、安定感が増したためか『四本の白きバラ』は以前とは比べものにならないぐらい活躍していた。
最初は新参者であり、ティオルの街のアイドル的存在であるアメリアたちと必要以上に親密なキースが気にくわず絡んでいた冒険者も多かったが、彼は誰に対しても、何をされても笑顔で対応した。
実力があるにも関わらず、それを鼻に掛けることをしないキースに冒険者たちもいつしか友好的になった。
「よぉ、キース」
キースの腕に肩をまわし、ダンは大きな声で笑いかける。
「痛いですよ、ダンさん」
ほほえみ返しながらキースは答える。最近では彼を見かけるたびにダンはこうして話しかけているのをよく見かける。
「ちょっと、ダンさん。キースが痛がってますよ」
二人の後ろからアメリアが声を掛ける。ダンは仲良くなるとすぐに肩に腕をまわす。
しかし、力任せにするので怪我はしないもののアザになることがあると彼と仲がいい冒険者がいっていたことがある。
それを聞いてからアメリアはダンに注意をするようになった。
「おぉ、怖ぇ。キースも大変だな、いちいち注意してくる恋人ってのは」
その言葉にアメリアは顔が赤くなるのを感じた。もう、ギルドではアメリアたちがキースの恋人であることは知られている。
しかし、直接的に言われたのは初めてだ。
「ダンさん、キースさんが怪我をしても私が治せますが、大切な人が怪我をするのを見るのはつらいです」
「マリーナ嬢!? これはだな、男同士のスキンシップってやつで」
ダンはマリーナに言い訳をし、腕を慌ててキースの肩から離した
「わかっていますよ。だから、男同士のスキンシップとやらは、ほどほどでお願いします」
口に手を当ててマリーナが笑った。その表情で彼女の冗談だとわかったダンはほっと胸をなで下ろす。
「でも、本当に怪我してないの?ミント心配」
見上げながら、ミントはキースの腕を取った。
「ああ、大丈夫だよ。本当にダンさんのいつもの悪ふざけだから、心配ないよ」
心配そうにのぞき込んでくるミントの頭をキースは撫でる。彼女は嬉しそうに目を細めた。猫だったら喉をゴロゴロ鳴らしていただろう。
「じゃあ、夜にミントが本当に怪我してないか確認してあげる」
背を伸ばしキースの頬にミントはキスをした。
「ちょっと、ミント」
拠点とする屋敷ならともかく、人前でそういうことをするのにアメリアはまだ躊躇する。羨ましさと恥じらいで先ほどよりも顔を赤くして彼女は注意した。
「アメリアもマリーナも一緒に確認すればいいよ。前みたいに一晩中、三人でね」
「まぁ、ミントさんたら。でも、いいですね」
明らかに熱を持った目をキースに向けてマリーナは笑っていた。アメリアに至っては恥ずかしさで顔を真っ赤にして手で覆っている。
「一晩中、美女三人に相手してもらうなんて羨ましいな、おい」
ダンは腕でキースを小突きながらからかう。返事に困ったキースは曖昧な表情の笑顔を返した。
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