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95 使いの導き

「何だったんだろうな」


「わかんないけど、あの建物に入ってこいってことなんじゃない?」


 前方にある建物は藩主の家と似たような形式で木造のようだが、それよりも厳かであり、扉は堅く閉まっている。

 ここが神社を模したダンジョンだとすれば、あそこは参拝をする拝殿だろう。


「扉、開けてみる?」


「いや、門を通るときと同じで礼儀があったはずだ」


 拝殿ならば、参拝をする前に礼儀があったはずだ。

 アッシュが左の方を向くと小さな建物があり、中では横に広い石があり、水が流れて落ちている。


 確か、参拝前に清める必要があり、手水舎の中でそれを行うと言っていた。


「さっきと同じで、俺のまねして」


「うん。わかった」


 ひしゃくがあったので一礼をしたあと柄を持って水をすくい、左手を洗い、持ち替えて今度は右手を洗った。左手に水を溜め、口をすすいだら左手をもう一度洗った。

 使用したひしゃくは両手で立て、柄の部分を水で流したら元に戻す。


 先ほどとは違い、行う工程が多いので混乱するヒルデにゆっくりと教えながら終えると二人の足下に転移の魔方陣が現れた。

 来たときと同じほどの眩しい光に包まれると、いつの間にか建物の中にいた。


 中はどこも木造で広く、奧にある正面の大きな扉は鳥居にもしていたしめ縄を結って閉められている。後ろを見ると先ほど固く閉じられていた扉があるので、どうやら上手く中に入れたようだ。


「ねぇ、何で入り方がわかったの?」


 ヒルデが不思議そうな顔でアッシュの方を見る。


「いや、わかっていたわけじゃない。あの門が鳥居だとしたらその先は神社かもしれないと思ったから、シゲル先生から教わった神社での礼儀を行っただけのことだ」


 オノコロノ国のことをよく知らない彼女からしたら、アッシュのしたことは意味がわからないことだっただろう。


「ってことは、ここは神様を祀ってるって言う建物なの? そんなところを模したのがダンジョンって本当に? 魔物も見たらないけど」


「…わからん」


 内部に入っても感じる魔力は清らかなままで、魔物の気配もない。

 もしかしたら、海の中にあるのでそれを維持するために大量の魔力を消費するために魔物を生み出すだけの力が残っていないのかもしれない。

 だが、そうだとしてもダンジョン独特のあの魔力が感じられない理由が説明できない。


 疑問は晴れるどころか増えるばかりだ。


「でも、神社の拝殿に入るって普通じゃあり得ないよな。しかも土足でなんて」


「そうなの?」


「ああ。拝殿の前にお金を入れる賽銭箱があって、普通はそこにお金を入れて参拝するだけだってシゲル先生から聞いた。中に入るなんて、それこそ関係者だけなんじゃないか」


「まぁ、ここ普通の神社じゃないし。ダンジョンかもだし」


 本来入ってはいけない場所にいること自体、申し訳ない気持ちがあるが、出口も見当たらないので今だけは許して欲しいと心の中で祈った。



 大きく息を吐き、気持ちを入れ替えて周囲を見ると扉は正面の他に左右にもそれぞれあった。


「怪しいのは正面の扉だけど」


「開けてみるか?」


「止めとく。鳥居と一緒で縄が結ってあるから、同じように正しい手順を踏まないと開かない気がする」


「そうだな。だとすると左右のどちらから行くべきか」


 どうすべきか相談していると、建物に入る前にも見たあの魚が正面の扉から現れるとアッシュたちの周りを泳ぎ、右の扉の方に消えて行った。


「やっぱり、ついてこいってことなのかな?」


「敵意はないようだが、警戒はしておいたほうがいいな」









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