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三、駆け込み寺と俺の進路 (1)

 黒豹こと平野瑞希は、不思議な女だった。ほとんど感情を表に出すことはないし、俺に会っても会釈する程度だ。――何か、それが誰かに似ている気がするんだ。


 あの日、あれから雪代は、俺にこう説明した。

 ――他人を寄せつけないから黒豹。何でウチで暮らしてるかって? 簡単に答えれば、アイツにとってここは、駆け込み寺だってことだな。

 ――駆け込み寺? 縁切りの?

 雪代は苦笑した。

 ――そういうんじゃない。ただ、行き場をなくした者が集う場所、っていう意味だな。

 ――行き場をなくした者……。

 雪代はやわらかく笑う。

 ――言ってしまえば、困ったときに助けになってやっただけだ。

 ――お前も来るか?

 冗談めかして言ったその言葉につられて、なぜか俺は誰にも話さないようなことまで、雪代に話していた。

 家が別居状態であること。両親を嫌っていること。毎日を息苦しく感じていることなど。

 話しても救われることはないと思いながらも、止まらなかった。本当はずっと、誰かに聞いてもらいたかったのかもしれない。

 そして一通り俺が話し終えると、雪代は何かを意見するでもなく、言った。

 ――話したいことがあれば、また来ればいいさ、と。

 話してスッキリしたのか、それとも雪代のおかげなのかはわからないが、雪代の家を出る時には、だいぶ気分が落ち着いていた。





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