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番外編 ジーナの勇者への遠い道1  ~召喚魔法ってあるんですね~ 部門別月刊一位記念

部門別月刊一位ありがとうございました。

番外編を投下します。

番外編 ジーナの勇者への遠い道1

 ~召喚魔法ってあるんですね~



 アルティメットミラーゴーレムの討伐以来、我が家に変化が訪れた。

「魔法は魔法が得意な人間に任せて剣で全てを切り伏せればよいと思っていたが、ジーナを見ていると魔法も使えることの重要性が認識できた。

 ここは、考えをあらためるべきタイミングだろう」とお父様……

「物理攻撃力は剣や打撃に適性がある人に任せていればいいと考えていたけど、一人の時に魔法だけではどうしようもない敵に出会ったときのことを考えると、物理攻撃も重要なのね。

 全ては魔法で何とかなると思っていたけど、私一人の時にミラー系の敵に遭遇すれば危ないわ。

 ここは、考えを進化させて物理攻撃の手段も身につけるべきかしら」とお母様……


 二人とも適性があまり高くないと言うことでお座なりになっていた苦手分野に取り組みはじめてしまった。

 もちろん、二人から能力を引き継いだ私ほどには使いこなせていないが、お父様は初級の火炎魔法と土魔法を自在に扱えるようになり、戦いの幅が広がったと喜んでいた。

 あれ以来、週に一度の魔物の討伐大会で優勝することが増えている。


 お母様は体を鍛えはじめたようで、今までは身体強化をしても私やお兄様の半分程度の体力だったのに、最近は走るのも速くなったし持久力もついている。こっそり肉弾戦の練習もしているようで、シャドウの右ストレートが様になってきている。


 私はというと、魔法剣の使い手の元祖として日々鍛錬に励み、今では主要5属性だけでなく、空間魔法や回復魔法も剣に纏わせることが出来るようになった。

 回復魔法を纏わせて斬りつけると、アンデット系の魔物にはとても効果があることも分かった。

 空間魔法は亜空間収納を纏わせる感覚なのだが、これはなかなかにエグい魔法剣となった。元々、亜空間に生命体を入れると、空気がなくて死んでしまうのが確認されていたが、空間魔法を纏わせた剣で斬りつけると、切った部分だけを亜空間に収納できる。

 つまり、アルティメットミラーゴーレムであっても、空間魔法纏の剣で斬れば両断できる可能性が出てきたのだ。

 もちろん、ミラー効果で反射される恐れもある。

 早く試したいのだが、あれ以来アルティメットミラーゴーレムに遭遇できていない。

 アルティメットではなくてもいいからミラー系のゴーレムはどこかにいないものかとお父様に相談したら、森のかなり深くまで入り込まないといないらしい。

 普段の討伐では、森から魔物があふれないように出口に近いところを中心に魔物狩りを行っているため、遭遇する方がまれなのだ。

 あの、アルティメットミラーゴーレムが、あんなに森の浅いところにいたことの方が珍しいことだったのだと気づかされた。


 成人さえすれば、冒険者登録して森の奥地を探索できる。早く成人して森の奥地を探索したいものである。

 そのように考えて、私はこの世界の救世主にでも勇者にでもなれるように、日々鍛錬に精を出し、週に一度の魔物の討伐では、たまにお兄様やお父様を押さえてトップを取ることも増えてきたのだが、実力が上がれば上がるほど、強敵と戦いたくて辛抱が出来なくなってきた。


 やはり、空間魔法を纏わせた魔法剣の威力がミラー系に通用するかをなんとしても確かめたい。


 なんとかならないものかと日々悶々としていたら、お母様が今までに見たことのない魔方陣を書いて何やら裏庭でやっているのに遭遇した。

 物陰に隠れてみていると、なんとお母様の書いた魔方陣からオオカミが現れた。

 ブラックウルフという魔物の一種だ。


「ふう」とやりきった感満載で一息つくお母様……

 そこに私が声をかける。

「お母様、それはもしかして召喚魔法ですか」

 ビクッとしてお母様が振り向く。


「ジーナ、見ていたのね。

 びっくりしたわ」

「内緒にする必要のあることなんですか」

「召喚魔法は実家に伝わるロストテクノロジーの一種なのよ。

 呼び出した魔物の制御が難しいらしくて、何人も術者が大けがをしたため誰も使わなくなったのよ」

「そんな魔法をなんでお母様がこんなところで?」

「それはね、私に足りていない物理攻撃力を補ってくれる魔物を召喚して使役できないか確かめたかったから練習していたの。

 召喚魔法の原理は知っていたのだけど、実際試すのははじめてだったから、失敗しても自力で処理できるブラックウルフを呼び出したのよ」

「それで、そのオオカミさんは使役できているのですか」

「多分ね。

 おとなしくしているのを見れば、私をマスターだと理解しているのだと思うわ。

 攻撃本能の強いオオカミ系の魔物がこれだけの時間経っても襲いかかってこないのだからね。

 試しに命令してみるわね」

 そう言うと、お母様はオオカミに伏せやお手をやらせて見せてくれた。


 どうやら完全に制御下にあるようだ。


「素晴らしいですわ、お母様。

 どうやって魔物を呼び出すのか私にも教えてください」

 私はすっかりこの新魔法に魅了され、訝るお母様を説き伏せて、何とか召喚魔法を教えてもらった。


「いいこと、ジーナ。

 くれぐれも自分の実力以上の魔物を呼び出してはダメよ。

 自分が過去に戦った魔物の中から、明確にイメージできるものなら何でも呼び出せてしまうのがこの魔法の恐ろしいところなの。

 呼び出した魔物を制御するには相手の十倍は自分が強くなくてはならないのよ。

 自分と同格の魔物など呼び出してしまったら、絶対言うことをきかないからね」


「分かりました」と元気に返事をし、私はその場を後にすると、こっそり侯爵邸を抜け出し、裏の林へと走った。

 分かったふりをした私だったが、もはや心の内はお母様の言うことを全く聞く気が無かった。


 そう、私は召喚魔法でかつて戦ったアルティメットミラーゴーレムを呼び出し、空間纏の魔法剣の性能を確かめたくて仕方が無かったのだ。


 私がアルティメットミラーゴーレムの十倍も強いかどうかは分からないが、むしろ制御下にない方が躊躇無くぶった切ることが出来て好都合だ。仮に空間纏の魔法剣が効かなくても、前にやったように物理攻撃で傷つけて、生じた傷に炎の魔法剣を叩き込めば勝てることは分かっている。

 林の奥へ着いた私は、はやる気持ちを抑えつつ召喚魔法を唱えた。








次でこのエピソードは完結です。

20時に投下します。

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