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第1話 結婚したのに出て行く夫

短期集中連載

14話完結予定です。

第1話 結婚したのに出て行く夫


「ジーナ、俺がおまえを愛することはない。

 我が愛は全てロザリーに捧げている」


 そう言うと、今日の昼間に夫となった男は夫婦の寝室を出て行った。


 私の名前はジーナ・ドレスデン……

 令和日本の記憶を持つ転生者だ。転生前の名前は思い出せないが、性別は女で10代後半だったような気がする。


 いや、そういえば私は、本日の正午をもってジーナ・マコゴレイとなったはずなのだが……

 先ほどの夫の様子ではこの関係が破綻するのも早そうだ。


 夫となった人の名はトルスト・マコゴレイ。次期侯爵が確定している王太子の側近であり、現財務大臣の長子でもある。

 トルストは才色兼備なイケメンで、昨年卒業した王立学園の成績も絶えずトップを争い続けるほど優秀だった。なぜ過去形かというと、学園の最終学年でであったロザリー・ハルノー男爵令嬢によって骨抜きにされ、第一王子や他の側近候補とともに大きく評判を下げたからである。


 それでも彼は高位の貴族。しがない伯爵令嬢でしかなかった私にとっては、学生時代の雲の上の存在だった人という認識だ。

 そんな私がなぜトルストのような超が付く有名・有能だった男性(過去形だが……)と結婚することになったのか。決して私が優秀だったからと言うわけではない。

 まあ、私に関しては体を動かす教科以外は至って平凡だったと言っておこう。


 私は王国の西の外れにあるドレスデン伯爵領で幼い頃はのびのびと育てられた。ただの田舎者である。下手をすると貴族のマナーもあやしいところがある。

 ドレスデン伯爵家は西の魔獣の森に隣接する領地をまかされ、そこから侵入してくる魔獣を討伐する役目も持つお家である。

 きな臭い隣国との国境をまかされている東のオウスティン辺境伯爵家には劣るが、魔獣辺境伯としてそれに次ぐ尊敬は集めている。

 しかし、魔獣あふれるお家柄ゆえ、田舎であることは否めない。魔獣の素材を売りさばくためのお店はたくさんあるし。民間の魔獣討伐を生業とする組織もあるが、農業生産をしたり手工業をしたりする民間人が他の領よりかなり少ない。文化的な活動をする人々はそれ以下だ。

 まあ、魔獣あふれる土地でのんびり創作活動をしたいという奇特な人がいないのは当たり前といえば当たり前だ。捜索活動ならしょっちゅうやっているのだが……、まあ、今は置いておこう。

 そんな土地に貴族のマナーやお勉強をしっかりと教えることの出来る人材などは期待すべくもない。

 代わりにいつ何時魔獣に突撃されても大丈夫なように、魔法と剣と槍、それに格闘術は女性でもある程度教え込まれる。

 まあ、私は適性があったらしく、ある程度では収まらずに、兄にくっついて魔獣討伐にも出かける戦闘女子に成長したのだが……


 にもかかわらず、私がトルストと結婚するに至ったのは、偶然と必然の織りなすあやしい運命に導かれたとしか言いようがなかった。


 本来トルストの婚約者は同じ侯爵家であるサーモミア家の次女アルメナ様だった。

 ところが王立高等学園在学中に男爵家の令嬢ロザリー・ハルノー男爵令嬢に第一王子のウラジミン様や他の取り巻きの方々と示し合わせて、卒業パーティーの場で全員婚約を破棄し、全員でロザリー・ハルノー男爵令嬢に愛を誓ったのである。


 いわゆる逆ハーエンドという奴だ。前世で遊んだことのある乙女ゲームで皆が憧れ、チャレンジするルートの一つといえる。まあ、私はそんなにやりこんでいたわけでもなく、この世界がどの乙女ゲームの類似世界かもわからないのだが。

 しかしながら、私たちにとって現実世界でもあるこの世界では、基本は一夫一婦制であり、貴族の当主などの後継が必要不可欠な場合は一夫多妻制が認められることはあるが、一妻多夫はあり得ない。

 当然ロザリー様も重婚は出来ず、最も身分の高い第一王子と婚約したのだが、そうなると他の婚約破棄した側近候補の人たちがあぶれてしまう。

 婚約破棄された当初の婚約者の家はどこも激怒しており、復縁はあり得ないし側近候補の婚約者だった人を別の側近候補にあてがうことも出来なかった。


 結果、年の近い貴族の令嬢で売れ残っていた娘に関心が集まる。


 かく言う私は、学園を卒業したら田舎(=実家)に戻って魔獣と戯れながら兄の手伝いをし、魔獣辺境伯軍の上級士官を目指そうと本気で考えていたため、お上品なお貴族様の婚約者候補としては見向きもされておらず、卒業という段階でも婚約者はいなかった。








次話 20時投稿予定

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