神世界
さて、だいぶん昔のことだがこの世界の成り立ちを思い出そう。
そう、巨人も小人も妖精も竜も獣人もエルフも電子生命体もいない、人しかいない時代。
あるいはいたのかもしれないが、「無いもの」として扱われていた時代。
最初に言い出したのは誰だったか。
「ロボっていいよね」
「わかる、半分生体だと最高」
「は?バイオは邪道だろうが」
「は?」
「は?」
普段ならここでバカ二人が殺しあって終わりだった。
ただ、彼らが今話しているこの場所は、久しぶりの集まりで、皆高揚していて、盛り上がりやすい.........ようはいつもよりバカになりやすい時だった。
「は?ロボより獣人なんだが?ケモミミ最高!もふもふ最高!」
「ケモミミ最高とか素人か?獣人はマズルと副乳と逆関節がいいんだろうがボケ」
「何言ってんだお前マズルはわかるが副乳と逆関節は二足歩行になったら邪魔だろ」
「畜生より高貴な森の民、エルフが最高なのは火を見るより明らかなんだよなぁ...」
「哺乳類ごときより竜の方が偉大にして最強にして最高にして究極」
「爬虫類いいよね」
「両生類よくない?」
「魚類もいいぞ」
「触手最高!触手最高!」
「デフォルトが一番、やっぱ拡張性能がイカれてる人間こそ至高の種族に決まってるんだよな」
戦争が起きた。
普段なら止めるものも皆一様にバカになっていて。
バカどもは残念なことに圧倒的な力を持っていた。
しばらくして一人が気づく。
「別に俺がお前殺しても俺が好きな種族が最高とはならなくね?」
バカどもは少しだけ賢くなった。
バカどもはバカだけど、力もあったし友もあった。
みんなで案を募り、ツテをたどり、とある世界を譲渡してもらった。
「この世界にそれぞれの好きな種族を作ろう、あとは好きにしよう。観測してもいいし、指示を出してもいい。自分が混ざってもいいし、放置してもいい。ルールはひとつだけ、『他の種族を滅ぼすな』」
バカはだいぶん賢くなっていたので、癖を語り合うのはいいが、比べるのは無駄だと気づいた。
そして約束が生まれ、その世界は混沌となった。
人しかおらず、人が支配して、人のために作った社会《世界》は、完膚なきまでに破壊された。
森の中から人の形をした獣が生まれた
山を見上げればそれは山の如き人だった
画面の中には光り輝くものが生まれた
鉄は意志を持って動き出した
空に覇者が現れた
起きたらお菓子が減っていた
海から鱗のある人が生まれた
小さい人が現れ始めた
獣人、巨人、電子生命体、機械生命体、竜、妖精、魚人、小人、人魚、エルフ、触手、吸血鬼、ゾンビ、天使、悪魔、etr...
ありとあらゆる「存在しないもの」が現れた。
反応はさまざまだった。
虐げた
虐げられた
攻撃した
攻撃された
救った
救われた
護った
護られた
ただ、大多数の人は滅んだ。
山は広がり、地に穴が空き、飛行機は落ち、船は沈んだ。
ただ、絶望か、諦観か、もしくは本能か。
人はそれに適応した。
技術を結び、人を差し出し、その世界に適合した。
あるものは全て《王》を手に入れた。
あるものは全て《権利》を失った。
あるものは全てを捨てた。
あらゆる方法で、人はそれに適合した。
今、世界は平和だ。
種族という名の歯車に、人という名の油をさすことによって。
意外と人の地位は低くありません。
超能力好きとか異能力好きとか異形好きのおかげ。あとふしぎなちから《魔術とか魔法とか》に適応できたのもデカい。
家畜種族の獣人が存在したのも要因の一つ。
獣人は一人で一個小隊と相打ちできます。そして獣人は神人の中でも弱い方です。
巨人とか個人差激しいけど文字通り山のように大きい巨人とかいますし。神人は基本的に桁違いです。
あと、元より数十倍大きく空間は拡張されています。




