表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/62

第一話 どう考えても”主人公”

「……海外に出張?」


 思わず箸が止まる。


「うん、今日、かなり上の人から直々に探りを入れられたし。順番的にも次はパパが海外の支社に行くんだろうな~って感じ。半年後くらいに内示が出るんじゃないかな?」


「ママの方もおんなじ。まさか、二人同時に海外出張になるなんて」


 家族三人水入らずの晩ご飯中に落とされた、特大の爆弾。お父さんもお母さんも、困った顔をしている。


「二年生の間は一人暮らしになっちゃうんだけど……大丈夫?」


 大丈夫じゃない。ぜんっぜん大丈夫じゃない。でも、社会人経験者である私は、この海外出張が二人のキャリアにとってめちゃくちゃ重要であることが分かる。分かってしまう。


「うん、だいじょうぶ! 任せてよ!!」


 ニッコリと笑って見せると、お父さんとお母さんはホッとした顔で微笑んだ。



 ◆



 目を背けていた事実がある。


 ――前世の記憶があるとか、”主人公”か”ヒロイン”なんじゃね?


 いやでも、前世の記憶があるだけだし。他に特殊なものないし。両親共働きの一般家庭で生まれ育った一般人だし。そう自分に言い聞かせて生きてきた。


 でも、これはダメだ。


 両親が海外出張で一人暮らしはダメだ! しかも二年生の時に!! おいしいポジションだよね二年生って!! 先輩も後輩もいるからね!! そういう問題じゃねぇんだよなぁ!!!


 声にならない悲鳴をあげながら、勢いよくベッドに転がる。スプリングがギシッと音を立てた。両親の部屋は廊下を挟んで斜め向かいにあるので、ちょっと騒がしくしてもバレないだろう。


 ――二年生になったら何かあるんですね。分かります。


 私は、”ヒロイン”ではない。モブ化現象を起こせない。突出した才能も権力も美貌も持っていない。”主人公”になりそうな男の幼馴染もいない。


 で、『前世の記憶』『両親が海外出張で一人暮らし』『二年生』というワードから考えると、どう考えても”主人公”になるだろう。性別が女なので、”女主人公”、かぁ。


 ”女主人公”かぁ~~~~! ロクなことにならないの確定じゃないですか!! やだーーー!!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ