第四十話 ループの真相
「義姉、さん……?」
ループ”主人公”くんがポツリとつぶやく。ご令嬢にあるまじき登場の仕方だったけど、この人が義姉”ヒロイン”さんか。やっぱり近くにいた……わりにはめっちゃ息を切らしてるな?(※1)
「はあ、はあ。な、なんなんですか! 貴女!!」
義姉”ヒロイン”さんは、チラッとループ”主人公”くんを見た後、私をキッと睨んだ。
「わたしと弟くんの制服デート(※2)に割り込んだあげく、わたしの能力を打ち消すなんて……!」
打ち消した覚えはない、が。
「……ええっと。それは、ループの犯人はあなただという自白ですかね?」
「はっ!?」
いやそんな驚かれても……すげースムーズに自白されて、驚きたいのはコッチなんだけど……色んな意味でゆかいな人だな、義姉”ヒロイン”さん。ループ”主人公”くんの語ってくれたご令嬢らしさが消し飛んでるけど。
「そんな、義姉さんが!?」
「ぐううっ! 図ったのね!?」
何も図ってないです。あなたの自爆です。
「義姉さん……」
繰り返す一週間でたくさんつらい目にあってきたらしいループ”主人公”くんは、信じられない――いや、信じたくないといった顔をしている。
「っあ、貴方が悪いのよ! わたしを選んでくれないから!!」
義姉”ヒロイン”さんは、つらつらと無限ループの真相を話してくれた。なんでこういう時の犯人って事細かに説明してくれるんだろうね。助かるけど。
――血縁関係どうのこうので、めちゃくちゃややこしかったです(※3)。
簡単にまとめると、無限ループに陥っていた原因は、ループ”主人公”くんと義姉”ヒロイン”さんの能力が同時に発動してバグっていたからだそうだ。義姉”ヒロイン”さんがループを発動させた後、ループ”主人公”くんの能力が覚醒。
二人とも”時間ループさせる能力”だったばっかりに、変に作用して無限ループに突入してしまった。
今は、義姉”ヒロイン”さんの方のループ能力が打ち消されてるらしい。理由は分からないけど(※4)。後は、ループ”主人公”くんが自分の能力を解除するだけだという。
なるほどなぁ。主人公にも特殊な能力があるタイプだったのね。把握した。他のルートだと、”ヒロイン”に避けがたい悲しい運命が待っていて、それをループ”主人公”くんの能力でなんとかするっていう展開になってそう。
――ところで、ふんわりボカしてたけど……義姉”ヒロイン”さん、ループ”主人公”くんを殺してるよね? ループの発動条件、ループ”主人公”くんの死亡だよね??
おい、目を反らすな、おい。
※1 見回りの教師にとっ捕まっていたら、自分の能力が無理やり解除され、息せき切って走ってきた。ちょうど自分の気持ちを暴露されそうになっていたため、思わず飛び出してしまった。ちなみに見回りの教師はお孫さん師範代。
※2 制服デートだと思っているのは義姉”ヒロイン”だけ。なお、制服を着ていたから見回りの教師に呼び止められた模様。
※3 長いので最後にまとめました。いちおう読まなくても大丈夫なようにしてあります。読みたい方はどうぞ~。
※4 能力を使って『私』を殺そうとしたので、一人称『僕』おじさんの”血液”が発動した。ループ能力が打ち消されたのは、その余波。
◆ 無限ループについて。
まずは、義姉”ヒロイン”さんの能力。
彼女の父親の家系――花卉樹家は、ある一定期間をループさせ、自ら定めた目的が達成できるまで繰り返す能力を持っていた。そして、亡くなった彼女の母親の家系――烏屋根家は、記憶を操作する能力を持っていた。
義姉”ヒロイン”さんは、両方の能力を併せ持つハイブリッド能力者として生まれた。
次に、ループ”主人公”くんの能力。
本人も母親も知らないそうだが、ループ”主人公”くんはループ能力者を排出する花卉樹家の遠縁だった。ループ”主人公”くんは、現代の花卉樹家において一番強い能力を保持していた。未覚醒にも関わらず、だ。その血を花卉樹家に入れるため、花卉樹家当主はループ”主人公”くんの母親と再婚し、跡取りに指名した。
義姉”ヒロイン”さんは花卉樹家と烏屋根家の能力を合わせ、とある目的を設定して時間をループさせた。
本来なら、義姉”ヒロイン”さん以外はループ中に自意識が無く、彼女の目的が達成されるまで自動でループが続くはずだった。しかし、そのタイミングでループ”主人公”くんの能力が覚醒してしまった。
ループの中で自意識が目覚めてしまったループ”主人公”くん。義姉”ヒロイン”さんは世界のループを自分だけで止めることが出来なくなったし、ループさせるのに手動でリセット(=ループ”主人公”くんを殺害)しなければならなくなった。




