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第二十七話 なにごともない朝

 明け方、遠くから聞こえるざわめきにふんわりと意識が浮上した。人の声、人の気配。しばらく耳を傾けていたけれど、差し迫った様子は感じられない。よかったと安堵しつつ、もぞもぞと布団にくるまる。


 もう一回寝よう。


 事情を何も知らないはずの私が出迎えても、みんなが困惑するだけだろうし。



 ◆



「ぅぉっ」


 ビックリしすぎて小さく悲鳴をあげてしまった。


 あの後、いつも通りの時間に目が覚めたので、朝ご飯の準備をするためキッチンへ来たのだけど……ダイニングルームの隣、リビングルームのソファでお孫さん師範代が寝ていた。


 えっ、なんで?


 疑問に思いつつも、部屋から毛布を持ってきて、お孫さん師範代の体にかける。師範代はピクリともしない(※1)。気配に敏いというか感覚が鋭い師範代が、こんなに近づいても起きないとは。よく見ると、あちこちに怪我しているし。よっぽど疲れてるんだなぁ。


 お孫さん師範代でこれなのだから、眼鏡”主人公”くんたちも相当に疲れていることだろう。朝ご飯の準備はゆっくりにした方がいいかもしれない。できるだけあったかいご飯を食べてほしいし。


 といっても、今日の朝食もハムエッグと玉ねぎのみそ汁だ。やることは多くない。お米を研いだり、玉ねぎを切ったり。のんびりと料理をしていると、後ろで物音がした。振り返ると、眼鏡”主人公”くんがキッチンの入口に立っていた。


「おはよう、ぅおおっ!?」


 な、泣いてる……!?


 えっ、えーっ?! なんで? どうして?? ものすごくオロオロしていると、眼鏡”主人公”くんは、涙をぬぐって顔をあげた。


「……ごめん。なんか、ホッとして……」


「そ、そっか」


 その言葉で、昨日ものすごく大変なことがあったらしいと察する。気になったので「聞いていい?」と確認したけれど、「聞かない方がいい」と言われたので、話を切り上げた。


 直後に、廊下の方からにぎやかな足音が聞こえてくる。”ヒロイン”ちゃん三人がダイニングルームに飛び込んできた。私をキッチンに見つけると、ぎゅううとしがみついて泣き出してしまった。


「おおおう……?」


 眼鏡”主人公”くんならともかく。どうして私が揉みくちゃになっているんだろう(※2)と思いながら、よしよしと三人の背中を撫でる。


 さすがに騒々しかったのか、お孫さん師範代がむくりと起き上がる。四人は、お孫さん師範代がリビングルームで寝てたに気づいていなかったのか、飛び上がって驚いていた。その様子がおかしくて、思わず笑ってしまった。


「おはようございます」


「……おはよう」


 あらま、ちゃんと目が合った。



 ◆



「あの~、こちらの方については、聞いていいんですかね……?」


 ()()そろって、ダイニングテーブルで朝ご飯を食べている。


 何回数えても七人いる。一人増えている。ウルフカットのキレイ系お姉さんが、テーブルについてモリモリご飯を食べている。……どなたさま?


 お姉さんの顔を認識できる。つまり、”モブ化現象”が起きていないので、”ヒロイン”か”サブキャラ”なのだろうことは分かる。


 眼鏡”主人公”くんは、困った顔で返事に窮している。


「説明がむずかしいんだよなぁ~」


「あら♡ あたしたちとキミの仲をみんなに説明してくれるの?」


 キレイ系お姉さんは、からかうように眼鏡”主人公”くんに声をかけた。”ヒロイン”ちゃん三人がムッとした顔で眼鏡”主人公”くんをにらむ。朝から空気が重ーい。


「ちょっ、ちょっと!」


「ま、あれは救急処置みたいなものだから。ノーカンで許したげる」


 焦る眼鏡”主人公”くんと、ケラケラ笑うキレイ系お姉さん。なるほど。なるほどなるほど。こちらのお姉さん『”主人公”の筆おろしを行う”サブキャラ”』だな!?


 童貞主人公の共通ルートで、筆下ろしをするサブキャラのお姉さん。もしくは、訳あり主人公の過去回想で、初めての相手として出てくるサブキャラのお姉さん。


 個別ルートに入るまでヒロインとのエロがない系のエロゲでよく見かけたなぁ。


 プレイ時間的にそろそろエロを挟みたいけど、主人公とヒロインがエッチできるようになるのはまだまだ先だ~~! という時に輝くサブキャラだよね。


 ちなみに、サブキャラなのでヒロイン(攻略対象)ではない。まあ、ファンディスク(※3)で攻略できるようになったりもするけど


 だから、”安全”かつ”後腐れなく”処女でなくなる方法の一つとして挙げていたんだけど……そういうポジションに狙ってなるなんて、難易度が高すぎて。ちょっと出来そうにないからなぁ。


 などということを考えている間に、キレイ系”サブキャラ”お姉さんの正体についてはうやむやになった。たぶん知らない方がいいってことなんだろう。


 ――まあ、そんなこんなで。『学園七不思議研究部』は、二泊三日の合宿を終えた。


 いや~~、何ごともなく合宿が終わってよかったね! うん!!


 なんか色々あったんやろなぁということは察しつつも、それぞれの事情に踏み込まなかったおかげで、(私の視点だけで見れば)何ごともなかった。


 バイト代も弾んでもらえたし、ホクホクである。


 心機一転、明後日から『”モブ化現象”を起こすイケメン』探しを再開しよう。”女主人公”対策、がんばるぞー!

※1 二十分くらい前まで、電話での事情聴取に応じていた。学生組は、後日改めて事情聴取を行うことになっている。


※2 普通に料理している『私』を見て、生きて帰ってくることができたのを実感できたから。『私』が『研究所』にも『学園の七不思議』にも関係ない人物だからこそ、ようやく安心できた。


※3 メーカーがファンサービスとして製作するディスク。アフターストーリーやIFストーリーなど、ゲームをクリアしたプレイヤーが楽しめる内容となっている。個別ルートしかない作品では、設定上ありえないハーレムシナリオが収録されたりもする。

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