第二話 R指定はエロだけじゃない
「おい、オッサン」
車窓を流れる景色をボンヤリ見ていると、”主人公”くんの怖い声が聞こえた。二人の方を見ると、”主人公”くんがおじさんの腕を捻り上げていた。素人目に見ても、そういうのに慣れてる感じが伝わってくる。
「やめとけ」
”主人公”くんから放たれる重圧に、おじさんは言葉も出ない。状況から察するに、人混みに紛れて”ヒロイン”ちゃんのお尻なり胸なりを触ろうとしたのだろう。
”主人公”くんは、おじさんから名刺をサッとスり取ると「次はない」と脅しつけて解放した。”ヒロイン”ちゃんが「手ぬるい!」と怒っているけれど、未遂だからなぁ。前世でも、痴漢犯罪は難しい問題なのだけど、今世ではそれに加えて”レイプかプレイか”問題があったりするらしい。
「ったく、学校でも電車でも、面倒なやつに絡まれやがって」
「わたくしのせいではありません! それに、あのいけ好かない男のことを思い出させないでください。気持ちが悪い!」
はい、私が、モブ顔でよかったとしみじみ思っている理由がこれ。
レイティングによって規制されるのは、直接的な性描写と――過度な暴力描写だ。この世界、犯罪率がめたくそ高い。軽犯罪なんてしょっちゅうで、重要犯罪は内容が斜め上にヤバすぎる。
ニュースで見た限り、科学では解明できないような不可解な事件がちょいちょい起きてるっぽいので、人智を超えた何がしかがあるのだろう。だってエロゲみたいなことが起きる世界だし。それがSFなのか、ホラーなのか、ファンタジーなのかは分からない。ぜんぶ混ざってる可能性もある。
ただ、犯罪のほとんどは”主人公”たちや”ヒロイン”たちに集中してくれているので、モブは比較的安全だったりする。
……まあ、テロ事件や連続殺人で十把一絡げに”グロスチル”される可能性もあるけど。それも、”主人公”や”ヒロイン”から遠く離れていれば、確率はグッと低くなる。
前世の日本を知ってると、かなりの治安の悪さ。けど、前世でいう治安の悪い国を旅行するのと同じくらいの対策で安全に過ごせる(※1)。モブならば、そのくらいで済む。”主人公”や”ヒロイン”? ……お察しください。
※1 夜間に出歩かない。現金は小分けにしてしまう。鞄を体から離さない。なるべくリュックを使わない。防犯ブザーと手鏡、ライトを持ち歩く。歩きスマホをしない。肌の露出を極力減らす。オシャレをしない。戸締りをしっかりする。ベランダに洗濯ものを干さない。などなど。




