第十四話 うれしくない呼び出し
(頭の中で)ひとしきり暴れまくった後、鎌首をもたげてきたのは後悔だった。
いつかこうなることは分かっていた。ならば、私には、できることがたくさんあったはずだ。確実に処女でなくなるために、取り巻きハーレム先輩を通してできることが。
でも、しなかった。いろいろと対策を講じたから、もう大丈夫だと思い込んでいた。
取り巻きハーレム先輩ばかりを責められない。自分の浅はかさに凹む。
――そう、後悔しているのはそれだけだ。うん、それだけ。
取り巻きハーレム先輩を都合よく使おうとしていた人間が、彼に同情とか憐憫とかしちゃいけない。さすがに失礼すぎる。
ただまあ、これから先、取り巻きハーレム先輩の人生に良いことがあるよう祈るくらいは許してほしい。やらかしたとはいえ、”主人公”くん先輩やお嬢様”ヒロイン”ちゃん先輩より、顔を合わせていたし話していた相手だから。ちょっとばかり情が湧いてしまった。
それはそれとして、かなりガチなやらかし(※1)をしたそうなので、そこら辺はしっかりと反省してください。マジで。
◆
どうにかこうにか気持ちを切り替え、ここ数日は新たな対策に移るための準備をして過ごしていた。今は向こうの返事待ちで、ちょっぴり手持ち無沙汰。
休日だし、天気もいいし、出かけようかな? と思った矢先にスマホに通知が入った。相手はまさかの取り巻きハーレム先輩。なにごと。
日付と場所と時間だけ。デートのお誘いにしては素っ気ない。呼び出し、と言った方が適切かもしれない。
ふと気になって、ファンクラブメンバーのグループメッセージ(※2)に取り巻きハーレム先輩から連絡があったか、それとなく確認する。すぐに、玉の輿ガチ勢の二人から反応があった。
「あんな人だと思わなかった」「ゼッタイに会わない方がいい」言葉は違うけど、二人ともそんな感じの内容だった。めっちゃキレてた。どうやら、この二人にも呼び出しがあったらしい。他のメンバーへは、なんの連絡もないようだ。
ホッと胸をなでおろす。二人が無事でよかった。想像していた最悪の展開は無かった(※3)。
ともあれ、すぐに返事があったということは、命の危険はない感じか。それにしても、かなり親しかった二人の次に連絡をするのが、入ってすぐの私。取り巻きハーレム先輩の考えはよく分からない。
未遂とはいえ事件を起こした相手と、一対一で話すのはかなりイヤだ、けど。
……会うかぁ。
考えないようにしても、”分かっていて何もしなかった”後ろめたさは拭えない。ならば、ガチ勢二人がキレるようなイヤな目に遭って、後ろめたさと相殺したい。
そんな下心に背中を押されるようにして、取り巻きハーレム先輩に了承の返信をした。
※1 性的暴行未遂事件と傷害未遂事件。お嬢様”ヒロイン”ちゃん先輩の目をえぐろうとした。こわい。このレベルのやらかしで、転校で済んでるのもこわい。
※2 ファンクラブのメンバーだけのグループメッセージ。取り巻きハーレム先輩が入っているグループは別にある。
※3 こっぴどくフられたことによって気が狂って、婦女子狙いの猟奇殺人犯にでもなったのかなと想像していた。




