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第七話 腹上死ってレベルじゃない

「諸事情あって処女でなくなりたいから、後腐れなくセックスできる相手を探してた、ねぇ」


 おじさんは、私の言葉をザックリまとめながらポリポリと顎をかいた。


「おじさんで良ければ構わないよ、と言いたいところなんだけど……僕とお嬢ちゃんじゃ、人としての”器”や”格”が違い過ぎて、セックスできないねぇ」


「それは……私のことを馬鹿にして言っているわけじゃないですよね?」


 言葉だけ聞くと、めっちゃ馬鹿にされてる気がするけど、おじさんの話し方はそんな感じじゃない。


「もちろん」


 おじさんの説明をオタク的にまとめると、”器”はその人のレベル上限。”格”は現在のレベル。


 そもそも”器”(レベル上限)がある程度以上ないと、”格”(レベル)を上げることできない。そして、”格”(レベル)の差が大きくなりすぎると、”格”下の相手と交われなくなる(※1)。


 なるほど。


 ”器”や”格”が備わっている人とは、つまり、”主人公”や”ヒロイン”、”サブキャラ”といったエロゲの登場人物っぽい人々のことか。彼らの特殊性はエロゲの登場人物っぽいからで納得してたけど、ちゃんと理由があったんだなぁ。


 いやいやいやいや、待って。


 この世界、レベルとかの概念が実在するの(※2)? 嘘でしょ?? 男性向け同人エロゲRPG感が増してきたんだが????


 あっ、でも、おじさんと私がセックスできないってことは、”器”や”格”が私に無いってことじゃん! これって私がモブであることの証明になりませんか!? なりますよね!?!? よっしゃああ!!!!


 内心でガッツポーズを決めながら、おじさんの話に耳を傾ける。


「ま、普通に生きてるだけじゃあ”器”があっても”格”は上がったりはしないんだけど。僕は、人間から何歩か踏み出した存在でね」


 そら、人の血を吸うような存在だもんなぁ。


「ちょっぴり”格”が高いから、”器”のほぼないお嬢ちゃんとセックスしたら、良くて内臓破裂――」


 良くて内臓破裂!?


「悪くて上半身が消し飛ぶんじゃないかな?」


 悪くて上半身が消し飛ぶ!?!?


 おじさんの腰の一突きで、上半身が消し飛ぶ自分を想像する。エロゲみたいなことが起きる世界で生きてるから、死ぬのはそれなりに覚悟してるけど、そんな死に方しとうない。


 まとめると、おじさんは同じくらいの”格”の相手としかセックスできないということか。


 ……いやまあ、セックスの相手してもらうのは、おじさんを助けるための方便だったけど。あわよくばという気持ちはそりゃあったので、当てが外れて残念だ。


 仕方がない、当初の予定通りの方法で――


「ところで、処女でなくなりたいのは、性的な快感に耐えられるようになりたいからって理由だったよね?」


「え? ええ、はい」


 おじさんは、「なら良かった」と頬を緩めた。笑うとけっこう若く見えるな。


「そういうことなら、僕でも手伝えるよ」


 ――凹凸を絡み合わせるだけが、性的快感じゃないからね。


 おじさんは、黒の革手袋をゆっくりと外した。

※1 正確には、”格”上の相手と交わる(セックスや戦闘など心や体の交わり)と、めちゃくちゃ経験値が入り”格”(レベル)が上がりやすくなる。けれど、”器”(レベル上限)のほぼ無い人がそれをすると、膨大な経験値を受け止めきれずに”器”が破裂して死ぬ。


”器”(レベル上限)に差があっても、”格”(レベル)が同じくらいならセックスできる。逆は無理。


※2 おじさんがいる業界では”器”と”格”という言葉で説明されているが、違う業界では別の単語で説明されていたりする。ただ、レベルのような何かがあるのはこの世界で共通の概念。

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