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原作開始前に攻略対象が死にました×2

4話です。短くなってしまいました。



 攻略対象の1人であるルークが既に帝国にはいない、ということをルークの父である枢機卿から聞かされた私は、帝都を発って侯爵領に戻っても呆然としていたが、しばらく経つと立ち直った。


(別の攻略対象と仲良くなればいいのよ!)


 メイン攻略対象はあと4人いるのだ。他の人と会って仲良くなればいい。私は宰相の息子であるカールに面会を申し込もうと思った。しかし、そんな折に父の元に皇帝から使いが来た。


「ミリア、実は陛下がユリウス皇太子殿下とお前を婚約させたいと言っているのだ」


 皇太子とミリアとの婚約がこのタイミングで来たのである。


「はい! お受けいたします!」


 前ならば、「死亡フラグだわ!」と断ろうとしたのだろうが、学園が創設されない以上、より確実な死亡フラグが待っているのだ。それなら、皇太子ユリウスと仲良くなって、ウォートリアへの対策を一緒にやってもらいたい。


 ユリウスの個別ルートでは、ウォートリアの侵攻に対して無為無策な皇帝に代わって、彼が摂政皇太子として実権を握り、国家の力を最大限に活用して、正面からウォートリアを打ち破ることになる。被害は大きくなるが、最も正攻法な解決ともいえる。


 私は、この婚約を是非とも受けることにした。なるべく早くにお会いたい、とも伝えてもらった。



 それから1週間後、「婚約の申し出に感謝する。1ヶ月ほど後に、ユリウスをそちらに向かわせるので、その後に正式の婚約としましょう」という手紙が来た。ユリウスとの顔合わせと、私がユリウスの婚約者として相応しいかをチェックするのだと父は言っている。



私とユリウスとの婚約が決まってから数週間後のこと、私が自室にいたら、アナが駆け込んできた。


「お嬢様! 大変です!」


「どうしたの、アナ。そんなに慌てて」


 アナを見ると、顔から血の気が引いて真っ白になっている。ただ事ではない。


「そ、それが……」


「それが?」


「ユ、ユリウス皇太子殿下が殺されました!」


「ええぇぇっ!!??」


(どういうこと!!??)


「旦那様が執務室でワーレン様と話しておられました。宮中は大騒ぎらしく、陛下は動揺してお倒れになられたそうです!」


「お父様のところに行くわ!」


 私はアナを連れて、父のいる執務室へと走った。


 執務室に入ると、父の腹心であるワーレンが父と話をしていた。彼は普段は侯爵家の帝都屋敷に詰めているので、私と顔を会わせたことは少ない。よっぽど急いで侯爵領に戻ったのか、ワーレンはボロボロの格好をしている。


「おお、ミリアか」


「お父様、皇太子殿下が殺されたと聞いたのですが……」


「話を聞いたのか? ワーレンが持ち帰ってくれた情報だ。お前にとっても婚約者になるはずだった人の話だ。一緒に詳しい話を聞くか?」


「はい、聞かせてください」


「ワーレン、話してくれ」


「はい、閣下、お嬢様。6日前に宮中から殿下が行方不明になりました。その後、近衛騎士たちが捜索を行なったところ、殿下は宮中を抜け出し、お忍びで市中に出ていたことが分かりました。その翌日に、帝都市中へ捜索網を広げたところ、教会の遺体安置所に殿下の死体が発見されたそうです」


「市中で何があったの?」


「どうも、どこかの雑貨屋に入ろうとしたところを、強盗に襲われたようです。金になりそうな物は全て奪われており、みすぼらしい姿で打ち捨てられていました。そのため、無縁死体として処理されかけていたらしいです」


(それって、ヒロインと皇太子の邂逅イベントじゃないの!?)


 ☆学では、ゲーム開始前にヒロインと攻略対象の皇太子ユリウスは出会っており、回想シーンでその様子が描かれている。


 たいへんな傲慢だと噂されていた侯爵令嬢、ミリアとの婚約を父に勝手に決められたユリウスは、憂鬱な気分を晴らすため、お忍びで帝都の市中を散策していた。そして、ある雑貨屋のショーケースで帝国の紋章である双頭の鷲が描かれたハンカチを見つける。その見事な出来栄えを見て、購入しようと店に入った皇太子は、自分が刺繍したハンカチを売りに来ていたヒロインと出会う。会話らしい会話はないが、皇太子はヒロインに一目惚れし、一方のヒロインも美しい皇太子の姿に見惚れるのだ。


「なんということだ……護衛はなぜ付いていかなかったんだ?」


 父が頭を抱える。そういえば、イベントシーンでもイベント絵でも、護衛の姿は描かれていなかった。


「皇太子殿下が固辞なされたとか、それでも処分は免れないでしょう」


「当然だ! 身命を賭してでも止めるべきだろう。あの小僧め!」


 父は唇を噛んで、憤慨している。


(待てよ……護衛?)


 嫌な予感がした。皇太子の護衛は確か……。


「お父様は、護衛の人を知っているのですか?」


「勿論、知っているとも」


 私の質問に、父は苦々しい顔をしながらも、答えてくれた。


「騎士総長レーベン子爵の息子……フリード・フォン・ベルガーだ」


目の前が真っ暗になった。


「お嬢様!!」



 どうやら私はユリウスが死に、フリードが糾弾されていると聞いて倒れてしまったらしい。父やアナは、婚約者になるはずだったユリウスが死んだことに驚いて倒れてしまったのだと思っているようだった。


 更に1週間ほど後、寝込む私にフリードたちの処分の内容をミアが伝えてくれた。


 護衛であったフリードは、皇太子殿下の護衛の職務を放棄していたことから斬首刑に処された。そして、その父であるレーベン子爵は騎士総長職を辞し、子爵位と全財産を帝国に返上して一介の平民になり、いずこへと消えたという。


 長年、騎士総長職にあり、その実力を以って騎士団を抑えていたレーベン子爵の失脚は、武官たちの間で権力闘争を引き起こした。紆余曲折の末に、政治的手腕に優れたフラーベル侯爵という人物(☆学には出てこなかった)が新たな騎士総長に就任したという。




 原作開始まで、まだかなりの時間があるというのに、5人のメイン攻略対象のうち3人がいなくなった。皇太子ユリウスは殺され、騎士総長の子であるフリードは死刑、枢機卿の息子ルークは東方へと旅立った。あと残されているのは、2人、宰相の息子カールと帝弟エーリッヒだけである。


(何がどうなっているの???)



ちなみに、フリードの個別ルートだと、彼がベルトラン王を一騎打ちで破り、捕獲する、という流れになります。


未登場のヒロインは目の前で格好いい男の人(しかも後で皇太子だと分かる)が殺され、身包みをはがされたのを目撃してしまい、再起不能です。


次話は1月30日午後9時に投稿予定です。


感想や評価をしてくれたら嬉しいです。

昨日の夜から新しい連載作品を投稿しました(全4話、毎日投稿予定)。最初の1行だけでも読んでいってください!

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