#062 『ちょうちんわん公がゆく』
ロアは一頻り暴れた後、疲れておとなしくなった。
「ふー疲れたにゃろ……」
「それはこっちのセリフだ」
「ウム」
「ピエーン」
話を聞く気になったいや、聞かざるをえない状態にしたロアに俺たちが置かれている状況を再度説明した。
俺たちが軍の勝手な魔導兵器実験でフォビドゥンと呼ばれる魔獣に転生させられた事。
軍の研究施設を脱走したことで、理不尽な理由で国家反逆罪の容疑で追われている事。
ここから少し進めば国境が越えられて、向こうに見える城まで行ければ安全である事。
頭の悪いロアにも理解できるように何度も話をした。
「わかったにゃろ。しかたがないから俺様もついていってやるにゃろ」
(それは別に求めてないが……まぁいいか)
さっきまで俺たちを焼き殺そうとしていたのに、どうしてそうなるのか。
10歳のアホの子の思考はまったく読めない。
状況をちゃんと理解してくれたのかはわからないが、ロアは敵対する事をやめて俺達と同行することになった。
いつの間にか結界も消え、霧が晴れて周囲は見えるようになっていた。
それから俺たち4匹の魔獣は見晴らしが良くなった野原を抜け、小高い山に聳える【古代魔城レーベンシュタイン】を目指した。
「ピエーン」
「ああ、段々城が近くに見えてきたな」
しかし、魔城が思ったより大きく、見えているのになかなか着かなかった。
だんだん緊張感も薄れ、俺たちは特に急ぎもせず観光地に歩いて行くような感じになっている。
「まだつかないのかにゃろー。喉がかわいたにゃろー」
「ウム。城なら水場くらいあるだろ」
もとから騒がしかったが、ロアが加わったことで一行は更ににぎやかになった。
「ピエーピエピエ」
「うんうん」
未だエクレアは何を言ってるのかちゃんと分からないが、今はなんとなくで会話できている気がする。
たった数日間の戦いまくり逃げまくりの旅だったが、ここまで何年もかかったような気分だった。
「なんか、あるにゃろ。燃やしていいかにゃろ?」
「やめろ」
分かってきた。ロアは元々こういう奴だ。
古びた城へと続く道に差し掛かり文字は掠れて読めないが、木製の大きな立て札があった。
「ウム、この辺はもうアラビカ国領だ。どうやら国境は越えたようだの」
「よかった。ひとまず安心ってことだな」
この数日間で俺は沢山の経験が出来、成長ができた。
きっと、これからも沢山の経験があるのだろう。
この先どんな運命でも、進むしかないのだから。
「エクレア、もう故郷には戻れないかもしれない。良かったのか? これで」
「ピエ!」
「……そうか」
「こんにゃろー! 城についたぞーちょうちん! はやく来るにゃろー!」
「ウム、わん公ゆくぞ」
「今いくよー!」
「ピエーン!」
ちょうちんわん公がゆく おわり
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この物語はここで一旦完結とさせていただきます。
もし、要望や人気があったら続編を書きたい!
感想も待ってますね。
最後までお付き合い頂きありがとうございました!




