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ちょうちんわん公がゆく  作者: イズクラジエイ
第三章 星の海と炎の海
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#058 『狂乱の炎の海 前編』



 

 俺は挑発に乗り、牙をむき出しにして愚かにも無策でビトーに走り寄る。





「そうだ、かかってこい! ぶちのめしてやるよおい!」



「うぉぉぉぉ!」



 ビトーとの接触の前に一瞬気にかけ視線を落とすと、いつも以上に悲しそうな瞳をしたエクレアと目があった。





「ピェェェェェェーーーーーーー!」



 俺が死の覚悟を決めてビトーに向かったのを悟ったのか、まるでそれを妨害するかのようにエクレアの額の赤い宝石が以前見たような強い輝きをみせ、耳をつんざく高周波を出した。



 その音は悲しみを感じる強い感情をあらわにし、周囲の全ての者の戦意を喪失させた。





「おい、うぉっ!? 耳がっ! くそっ!」



 手元から悲しみの咆哮をあげる兎にたまらずビトーは掴んでいたエクレアを放り投げ、己の両耳を塞いだ。



 俺たちもその高周波に圧倒され身動きが取れなくなっていた。





「ピェーーーーーーピェ!」



 空高く投げ捨てられたエクレアは受け身も取らず、そのまま地面に叩きつけられ反応が無くなった。





「エクレアー!」



 後方で地に落ちたエクレアは額の宝石の輝きも失われそのまま静かに横たわっている。



 エクレアとてただの兎ではない。あのくらいで死ぬとは思わないが心配だ。





「ハァハァハァ……何だったんだ一体」



 俺たちも動けないが、ビトーも完全に動きが止まっている。



 エクレアの意識が途切れたことで今は静かになったが、あれを近くでくらっては三半規管をやられてしばらく動けるはずもない。



 どうやらビトーは超音波を出すエクレアの固有能力ノイジィを侮っていたようだった。



 サメ撃退の時に知ったけど、あいつの超音波近くでモロに浴びると鼓膜が破れかねない。



 破壊力は無くともあれは地味に恐ろしい能力である。



 今の奴なら一撃を加えられると思った。



 俺が足を一歩前に出した時、バウムは逆に後ろにさがったのに気づいた。





「わん公、さがれぇ!」



「なん――!?」



 バウムの声に驚いて俺は前に踏み出そうとした足は止まったが、俺がその意図を理解する前に事は起こった。





「ダイナミックサドンリーブレイズ!! にゃろ!」



 正面で耳を塞いでかがんでいるビトーに巨大な火球が降り注ぎ、熱波で俺もバウムも吹き飛ばし、あたりはまたたに火の海に変わっていった。





「うわぁぁぁー! うっ! あちっ! 何がおこったんだ?」



 火球の直撃したビトーは一瞬にして全身が燃え上がり、悲鳴を上げる間もなく両手を耳にあてたポーズのまま地面に倒れ込んだ。





「ウム……これはっ!?」



 黒焦げの塊となって伏したビトー背中に見覚えのある、いや、忘れもしない赤い猫が乗っていた。





「うーん。新必殺技、燃えがイマイチ! 駄作にゃろーきれいな灰にならなかったにゃろー」



 二度と会いたくなかった奴だ。海岸で遭遇した炎を操る猫の魔獣の姿がそこあった。

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[一言] 放火魔だ!
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