#057 『帰ってきた不死身の男』
「ビトー!」
「ピエーン!」
「筋肉ダルマ!」
「おいおい! だぁれがが筋肉ダルマだ! 犬コロ! 今度こそぶっ殺す!」
死闘の末に落とし穴に埋めたはずのビトーが全身泥だらけのままで現れた。
斬ったはずの腕もくっついており、今は問題ないようだった。
「マジで不死身なのかよあいつ」
ビトーは不死身らしいが、不死鳥の如くとはいい難く、白い軍服がボロボロになっており、かなり激昂している。
まぁあんな事すれば当然といえば当然か。
「バウム、まずくないかコレ」
「ウム……最悪だの」
「おいおいおいおい! それはこっちのセリフだ! 腕は斬られるわ、獣に泥かけられて埋められるわ、途中の山でいきなり山火事にあって服は焦げるわ、鉄砲水で土砂崩れにあってまた埋まるし、今までで一番最悪な任務だっつーの! 過去一だ過去一」
(こいつもあの洪水被害者か)
前回と違って作戦も立ててなければ、打ち合わせもする余裕もない。
バウムは俺と違ってまだ怪我も全然治ってない。
エクレアもさっきの大泣きでかなりバテているはずだ。
目の前の敵はあれだけやってもすぐ追ってくる不死身ときている。
この状態で逃げ切れるか? 多分無理だ。
一時の油断で非常にまずい状況に陥っている。
俺とバウムは近くに固まっているがエクレアがビトーの向こう側で震えている。
ここは、そのまま逃げてくれたほうが助かるが……
思惑とは反対にエクレアはこっちに合流しようとビトーの横を走ってこっちへ来てしまう。
「おいおい、おっと、変な真似はするなよ。お前のタックルなんぞ効かんが、うっとおしいからな」
「エクレアー!」
走り抜けようとした白うさぎの耳を掴みあっさりとエクレアは捕まってしまった。
あれだけ泣いて力を使った事で、やはりエクレア本来の素早さがなくなってしまっている。
「どうする? バウム」
「ウム。前にも言ったが、あいつは粉々にするか、燃やし尽くすかぐらいでないと止められん。今は逃げるしか無いの」
「そんな! エクレアが捕まってるんだぞ。しかも国境の正しい方角もわからないし……」
「ピエーン!」
これはかなり詰んでいる。
バウムはサイコパスだから逃げる気満々だが、俺にはエクレアを見殺しにして逃げることなど出来ない。
かといって、この不死身の筋肉ダルマと戦ってなんとかなるビジョンも思い浮かばない。
「……やるしかないか」
「おちつけ! わん公。私達ら魔獣は丈夫だが、不死身ではない。考えるんだ」
「そういう事だ。観念しろ犬コロ。もう鬼ごっこはごめんだぞおい!」
「ピエン! ピエーン!」
耳を掴まれて痛がり、エクレアが暴れている。
「エクレアを離せ!」
「おいおいおい。だったらコソコソしてないで、始めからかかってこいよ。俺はいつだって正面突破だ」
「ちくしょう!」
俺はエクレアをビトーの手から引き離すためにビトーに玉砕覚悟で突っ込んでいった。
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