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ちょうちんわん公がゆく  作者: イズクラジエイ
第三章 星の海と炎の海
42/63

#041 『取引』



(やっぱりそうなるよなー)


「ウム。本性を現したなデミタス。こいつの言うことを聞くことはない。どうせろくな事にならぬ」


「やー。博士はいつも私の考えに懐疑的だね。私は常にこの国の未来を思って尽力しているのだよ」


「ウム。どの口が言う。破滅の願望者め」



 どうやらバウムとデミタスの間にはただならぬ確執があるようだ。



「やー。あれだよ。ロブスタは新たな力の象徴。その力を求めずして何とするかね」


「ウム。それはただのお主の解釈だ。国は力など望んでおらぬ。欲しいのは真理だ」



 元軍属の研究員とそれを統括するトップとの言い争いはお互いの信念のぶつかりあいだった。



(力も真理もどっちもいらねぇー。帰りてぇー)



 俺の欲しいのはそんな物ではない。


 決してそんな物では……



「やー、決めるのはレイト君、君だよ。私はどっちでも構わんさ。力は貸してほしいけどね。ははは」


「ま、待ってくれ。そんな決断簡単には……」


「やー。考える時間もあげよう。いや、構わないんだけどね。しかし、君達にはすでに抹殺許可が出ている。止められるのは私だけだ」



 実質、選択の余地など無きに等しかった。


 デミタスの言うとおり軍の研究に手を貸せば、とりあえず命は助かりそうだが、きっと実験動物扱いだ。


 その後もどうなるか分かったもんじゃない。



「マジかよ……ちくしょう」


「やー。君もいたのかエクレア君。エクレア君は頑張ってくれたからね。良いデータが取れたよ」


「そうだ、エクレアは兎はどうなるんだ?」



 そう、先の戦闘で軍人たちは俺とエクレアを殺そうと襲ってきた。


 抹殺許可が出ているということは俺が条件を飲んでもエクレアは助からないという事だ。



「やー。彼女はもう調べ尽くしたからね。用は無いよ。あーでも、レイト君。君が手伝ってくれるなら助けてあげなくもないかなぁ」



 このデミタスと言う男は笑顔のまま平気で残酷な選択を迫る。


 考える時間はくれるというが、追手が待たないならばそれも意味はない。


 捕まえずして人質をとられたようなものだ。



「卑劣な……ウム」



 俺が仮にこのデミタスと男に協力したとして、いずれ用済みになれば始末されるだろう事は火を見るより明らかであった。



「やー、これはお願いではない。取引だよ。どうするねレイト君。さぁ、さぁ、さぁ!」



 ホログラム越しのこの威圧感。


 まさかの国家元首に命の手綱を握られているという事態に全く現実味を感じない。


 だが、一人少しばかり命を長らえたとして何になろうか。


 それさえも何の保証もない。


 判断材料は少なかったが、国のために働いたバウムを裏切った男が自分の言うことを聞いてくれる筈も無いと思った。



「ピエン……」



 そして何より、全てを失い崩れ去った家屋の前に佇むエクレアを見て決心がついた。






「決めたよ」


「やー、懸命だよレイト君。新兵器開発に協力してくれるんだね!」


「違う! お前には付いていかない。エクレアも守る。全部、全部自力で何とかしてみせる!」


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