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ちょうちんわん公がゆく  作者: イズクラジエイ
第三章 星の海と炎の海
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#039 『戦場後』



 兎を追いかけ迷い込んだ黒く燃え尽きた町並み。


 少し前までは栄えていたであろう街が文字通り廃墟となっていた。


 直視できなかったが、焼け死んだ人間の遺体も途中で見かけた。


 遠くから感じた沢山の入り混じった匂いの正体はこれだった。



「エクレア……」



 そこにエクレアの家があったのだろうか?


 そんな当たってほしくない予想が頭をよぎる。


 エクレアは喋れないが、その奥に悲しみと怒りの感情があることは容易に感じ取れた。


 姿こそ魔獣なれど、元は人間の少女。


 しかも、住んでいた街と家が焼け野原になったとあれば、泣きわめいても誰も咎めはしないだろう。


 どうしてこんな事になってしまったのだろうか?



「わん公、あれを見ろ」



 バウムが羽根を差し出した方向に原型を留めていないが何か大きな残骸がある。



「あれ、もしかして……」


「ウム。ギア飛行船【リーズンフォーゲル】がここへ落ちたのだ」



 俺たちが乗り込んでいた巨大な飛行船は脱出時に炎上しながら落ちていった。


 その結果がこの街へ甚大な被害を及ぼし墜落していだのだった。



「いや、でも普通こんなになるか? 全然関係ないところも燃えてるし、無茶苦茶建物壊れてるぞ」


「ウム。考えられるとしたら、飛行船が落ちた事でここが戦場になった。しかないの」


「戦争……ここで?……まじかよ」



 確かにこの街は戦争でもあったような惨状だった。


 見渡す限り崩壊した建造物と粉々に散らばったその残骸、そして無残な遺体の数々。


 よくみれば、至る所に少し前まで「人間だった物」が転がっている。



(ひどい匂いだ……ちくしょう。さすがにこれは気分的にもキツイぜ)



 考えていた予定は台無しだ。


 エクレアを家に送り届けて安全な場所だったら、そのまま別れるつもりだった。


 俺は目立つし、追われる身なら常に危険は迫っている。


 エクレアはその辺の森の獣よりよっぽど強い。


 無理に俺と一緒に居なくても大丈夫だろう。


 小さな兎なら隠れて暮らすことも可能だしな。


 安易にそんな事を考えていた。






 全てが甘かった――


 元より俺たちに帰る場所など無かったのだ。


 バウムは裏切られて軍に追われ、謀反の「お尋ね者」だ。


 エクレアは無理やり魔獣にされた農園の娘で一般人らしい。


 それがやっとの事で逃げられて帰ろうにも、家どころか農園のあった街ごと焼け野原だ。


 俺は俺でかなり最悪だ。


 ここがどこの惑星でどういう世界かも良く分かっていない。


 宇宙規模で迷子である。


 しかも、犬になってる。どういう事やねん。


 途方に暮れるとはこの事だろう。


 俺たちはまず、やろうとしていた目的を見失ってしまった。










 仕方ないので、墜落した飛行船の残骸跡に何か無いかと向かおうとした時だった。



「……ピエン」



 呆然と佇んでいるエクレアの足元に何か丸いものが転がってきた。

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