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ちょうちんわん公がゆく  作者: イズクラジエイ
第三章 星の海と炎の海
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#038 『黒い町並み』



 それから夜が明け、俺たち3匹の魔獣はバウムの先導により目的の街の近くへまで来た。



「バウム。なんか変じゃないか?」


「ウム。何がだ?」


「道も納屋もあるのに人の気配がないし、道の先も何か臭ういうか……とにかく何か変だ」


「ウム……」



 森を抜け日本に居た時のように舗装こそされていないが、人の往来があったであろう道に差し掛かった。


 道の両側面には何か果物のような物がついた農園らしき木々が等間隔に生えている。


 それにも関わらず、人間の姿は全く見えない。


 街と言うのは名ばかりで人口は少ないのだろうか?


 バウムは何か知っているはずだが何も教えてはくれない。



「ピエ!」



 エクレアが何かに反応し、なにやら急いで道なりに走っていった。



「どうしたエクレア!」



 エクレアは音に敏感だ。


 この色々いり混じった匂いの理由が音で分かるのだろうか?


 嫌な予感がする。


 俺は全力で走ってゆくエクレア追いかけた。



「ピエ、ピエ、ピエー」


「待ってくれ、おい。エクレア!」



(……速いなオイ)



 まさか自分より小柄のうさぎに走って全く追いつけないとは……


 エクレアの姿が見えなくなってきて、代わりに町並みが見えてきて匂いの原因を理解した。



(大変だ。町が……建物が……ほとんど燃え尽きて崩れかけている)



 俺はエクレアを追うのを諦め、廃墟と化した町を見回して叫んだ。



「バウム! どこだバウム!」


「……いるよ。ここに」



 追いかけてきたバウムが燃えて黒い塊となった建物の上に降りてきた。



「知っていたんだな。これを」


「ウム。教えたら来なかったか?」


「いや……エクレアの住んでた家がここに?」


「ウム。研究所にあった情報が確かならそのはずだ」


「マジかよ……エクレアを探そう」



 不幸にも俺の嫌な予感はよく当たる。


 全力で走って行ったエクレアの心中も気になるが、放っておくわけにもいかない。


 どうみてもこれは普通の状態じゃない。




 日本の街のように電柱や、高い建物が無いせいかそう文明が発達しているようにはみえない。


 魔法やトランスギア等の話を聞いていたせいか、街はもっと近代的なイメージをしていた。


 黒ずんでいるが、この町の家はレンガと土と木で出来ているようだ。


 もうほとんど燃え尽きてそれ自体に危険はないが、燃えるというと例の赤い猫の顔が頭の隅をちらつく。



(できれば、二度とあんな目にあいたくはないからな……)




 しばらく探し回った結果、他と同様に崩れて黒い塊になった建物の前にぽつんと目立つ白い物が見える。


 見間違えようがないうさぎが居た。


 うさぎの足元には水たまりが出来ていた。


 いつもの鳴き声はしない。


 今までの経験からして、泣いていない彼女の姿は逆に不自然だった。


 額に赤い宝石を宿す兎、魔獣エクレアの姿がそこにあった――

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