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ちょうちんわん公がゆく  作者: イズクラジエイ
第三章 星の海と炎の海
24/63

#023 『命からがら』


 ――まただ。


 またこの展開だ。


 全身火だるまのまま海へ落ち、そのまま沈んでいく俺の頭を駆け巡る思い。


 自分の考えたことなのか、誰かが話しかけているのか。


 たまに起こるこの現象俺の『脳内会議』が始まった。


 別に二重人格というわけでもないけれど、自分の中で思考を整理するために、沢山の自分が意見をだして議論する。




「おい、何やってんだよお前」


「言っても仕方ないだろう、もう済んだ事だ」


「あんなウサギなんか助けようとして命張るなんて、お前らしくもない」


「自分でも分からないよ。こんな事、今までなかったからな」


「だいたいお前、仕事ばっかりしててろくに他人の事なんて考えてなかっただろ」


「変わるんだよ。変わろうとしなければ、何も変わらない」


「まてまて、お前ら。今問題はそこじゃないぞ」


「どうすんだよこれ、死ぬぞ?」


「死ぬ? 俺が? どうして?」


「だって沈んでんじゃん。火傷したままで」


「マジかよ」


「とりあえず生きるぞ。話はそれからだ」




 ほんの一時の事だけれど、会議は結論に至った。


 頭の中の俺はすぐに考えたがる、一瞬で沢山のことを。


 だが、考えるだけじゃダメだ。


 何かしら結論を出して動かなければ、人間は生きていくことは出来ない。



(……もう人間じゃなかったか)



 犬だろうが、魔獣だろうが同じだろう。


 まず、生きていなければ考えられないし、ちっぽけな願いや願望も叶えられない。



(生きたい!)



 心も体も沈んでる場合ではない。


 目的は沢山あるんだ。


 自分の思考なのか、動物的本能なのか、俺は浮上しようと必死でもがいた。


 ボロボロの体で、完全に思い通りには動かない手足を動かして。



「ぶはぁっ。はぁっ」



 水中に適応できる魔獣の俺に意味があるのかは分からないが、地上の空気は吸える。


 息も上がるし、お腹も減る。


 光るしか能のない犬は全身火傷しつつも、生きていた。


 どれくらい海でもがいていたのだろう。


 時間の感覚もおかしくなっていた俺の体に鞭打つように、無理やり浜辺に体をはいずり上がり、少しして、ふらふらと歩いていった。



(エクレア……どこだ)



 そこにはエクレアも、あの燃えるロアの姿も無かった。


 今は疲労のせいか、微細な匂いはよくわからない。


 火の海だった海岸沿いも今は落ち着いており、強い硝煙しょうえんのような匂いだけが残っている。


 そこには燃えて焦げた貝殻と、何かが燃えた後の黒い塊から、そこらじゅうで狼煙のろしのようなものが空へ伸びている。


 俺は歩くのもやめ、ただしばらく呆然ぼうぜんと、立ち上がる白い煙を見上げる事しか出来なかった――




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頑張って完結までもっていくよ。感想まってます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 全部読み終わってから、感想を書こうと思っていたのですが、この回はここまで読んできた中で一番メッセージ性が強いように感じたので足を止めてみました。   >犬だろうが、魔獣だろうが同じだろう。…
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