#022 『炎の猫 後編』
ドンっという鈍い音と共に浜辺に猫型魔獣の鳴き声がこだまする。
「ン゛ニ゛ャャャャーーーーーー!!」
(くそ……やっちまった)
結構勢いよく弾き飛ばした猫はそのまま砂まみれになって転がり、苦しんでいた。
「ゲホッ、ゲホッ……よく……も……やってくれたにゃろー……ゲホッ。こんにゃろー」
体当たりが無防備な猫の腹部を直撃し、呼吸を乱している。
この隙きに俺はエクレアの安否を気にかける。
(あいつは? エクレアはどうなった!?)
直前に放たれた猫の体よりも大きくなった火球は、軌道上の砂浜の地べたを薄くえぐり真っ直ぐと伸びていた。
そしてエクレアの居たあたりの場所で今も火柱をあげて激しく燃えている。
さっきまでその場にいたエクレアの姿は見えない。
「エクレアーーー!」
「なんだにゃろ……貴様、ゲホ。やっぱりしゃべれるにゃろ。騙したのかにゃろー」
(しまった! ついうっかり叫んでしまった)
まずいぞ。
このままだと、俺はこの猫の必殺技とやらで焼き犬にされてしまう。
今から逃げれるか――
――いや無理だ、俺にはまだ、そこまで自由には動ける体力は戻っていない。
「貴様のせいで、ロア様の新必殺技の破壊力がいまいちにゃろー」
(あれがマックスじゃないのか……俺はとんでもない猫を敵にまわしてしまったのかもしれない)
あまり頭の良さそうな猫ではないが、このロアとか言うやつは確実に俺より強力な能力を持ち、しかも好戦的である。
息を整え、口から微量の炎を吐き威嚇する猫。
咄嗟のこととはいえ、この魔獣を怒らせたのは愚策ととしか言いようがない。
後の祭りとはこの事だろう。
「こんにゃろー。焼き犬祭りにゃろー」
「……ちくしょうめ」
こんな奴相手に今取れる手段はそう残されてはいない。
後の展開は俺の予想通りであった。
「よし、今新しい技の名前思いついたにゃろー。貴様でためすにゃろー」
「ちょ、待てよお前。いきなり来て、そこらじゅう火の海にしやがって……勝手すぎるだろ」
「問答無用にゃろー」
(ダメだ、まるで子供だ。話が通じる相手じゃない)
「ウルトラー……バーニン……んにゃ?……ってあれ? さっきまで頭に出てたのに技の名前忘れたにゃろー。まぁいいや、燃えちまえこんにゃろー!」
目の前で何をされたのかよく分からなかったが、名前すら適当な炎の攻撃で吹き飛ばされる俺。
さっきの火球とはまた違う、猫の全身から放たれた火炎を伴う突風で、おれは再び星海の方へと全身を炎に包まれ、激しく飛ばされるのだった。
(……エクレア)
一匹の犬型の魔獣はエクエアの事を気にしながらも、為すすべもなくまた、星海に落ちてゆくのだった――
もし『面白い』『続きが気になる』と思ったらブックマークと、広告下にある【☆☆☆☆☆】マークを選んで応援してね!
感想も待ってます。




